"今回は、探さない" 第10話
湿布の匂いとさな封筒
達也が派遣の現にるようになってから、週が過ぎた。
朝はにをて、帰宅は夜のを回る。
以着ていた仕ての良いスーツはクローゼットの奥に仕われ、量販で買った物のスラックスと、撥加のジャンパーが夫の仕事着になった。
週で、達也の体はキロ落ちていた。
頬の肉が削げ、首筋の筋が浮きている。
けれど、以のように「元課」の嫌さを庭内に撒き散らすことはなくなっていた。
ある朝、洗面所のゴミ箱に、使い切った消炎湿布のフィルムが何枚も捨てられているのを見つけた。
たいのでチラシを配り、階段をりりし、いパンフレットの束を抱え続けた腰が、鳴をげているのだ。
私は何も言わなかった。
ただ、仕事帰りのドラッグストアで、し価な温タイプの湿布を箱買い、達也の枕元にそっと置いておいた。
お弁当箱の底には、ご飯が見えなくなるくらいたっぷりの豚の姜焼きを敷き詰めた。
その週の曜の夜、夕の片付けをしている私の背で、慮がちな音がした。
振り返ると、のがっていた。
には、さなクラフトの封筒が握られている。
「……お母さん、これ」
差しされた封筒を受け取ると、に千円札と貨のみがあった。
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表には、几帳面な字で『バイト代』とかれている。
「何、これ?」
「駅のカフェで、先週から夕方のシフト入ってたの。万千円しかないけど……しにして」
は目を伏せ、エプロンの裾を指先でいじった。
「お父さん、毎晩だらけで帰ってくるでしょ。は脱いだ靴すら洗濯籠に入れなかったのに、今は玄関で自分で靴を拭いてる。……あたし、お父さんが頑張ってるの見てたら、部でスマホいじってるのが苦しくなって」
喉の奥がツンと痛んだ。
「、あなたの留学の費用はね――」
「留学は、来でもけるよ」
が顔をげた。その瞳には、かつて私に「お母さんはたい」と泣いて抗議したときの幼さはなかった。
「お父さんだけが啜って、お母さんだけが卓叩いてるなんて、ずるいじゃん。あたしもこのの族なんだから、しは背負わせてよ」
、私が「私が全部なんとかしなきゃ」と抱え込んできたものが、子どものによって静かに解かれていくような気がした。
私は封筒を両で握りしめ、さく頷いた。
「ありがとう、。切に預かるね」
そのとき、玄関の郵便受けがガタリと音をてた。
見にくと、青い封筒が落ちていた。
からの、宅ローンの返済予定表だった。
残の猶予は、あとを切っていた。