"今回は、探さない" 第6話
留学をやめるという言葉
そのの夕は、塩鮭の焼き魚と、根の煮物、ほうれんのお浸しだった。
費を削るため、牛肉や刺が卓に並ぶことはなくなっていた。
それでも私は、品数だけは落とさないように気を配っていた。
卓が荒れれば、庭の空気は気に底へと落ちていく。
のが、箸を止めてずっと俯いていた。
茶碗ののご飯は、半分も減っていない。
「、にわない?」
私が声をかけると、はビクッと肩を揺らした。
そして、恐る恐る顔をげ、私と達也の顔を交互に見つめた。
「あのね……お父さん、お母さん」
「何だ? くえ。めるぞ」
達也が嫌そうにテレビのニュースから目をさずに言った。
は膝のでスカートの裾をぎゅっと握りしめた。
「休みの、オーストラリアの期留学のことなんだけど」
リビングの空気がわずかに止まった。
が半からずっと楽しみにしていた、学主催の週の語学研修プログラムだ。
内の選抜テストを通り、パスポートもすでに用してあった。
費用の万円は、来週が振込期だった。
「……あたし、くのやめる」
の声はさかったが、はっきりと響いた。
「先には、庭の都で辞退しますって伝えるから。だから、万円、払わなくていいよ」
「」
私はすぐに箸を置いた。
広告
「かなくていいなんてことないよ。あの研修のために、あなた毎晩英語の勉頑張ってたじゃない。選抜に通ったとき、あんなにんでたでしょ。おのことはが考えるから、が気にすることじゃないの」
「でも!」
が声をずらせた。目には涙が溜まっていた。
「だってお父さん、仕事見つかってないんでしょ?! お母さんがスーパーで割引シールのついた野菜ばかり買ってるの、あたし気づいてるよ! そんなに、あたしだけ万も使って国にくなんて、できるわけないじゃん!」
子どもの残酷なまでの敏さが、達也の胸の奥を正確に撃ち抜いた。
ガチャン、と陶器がぶつかりう激しい音がした。
達也が握っていた茶碗を、テーブルのに叩きつけたのだ。
「誰がそんなこと頼んだ!」
達也がちがり、鳴り声をあげた。
青ざめたが、子のでを縮める。
「おが気を遣うようなことじゃない! 親の懐具を勝に配して、恩着せがましい真似をするな! 体な、この非常に呑気に留学だの何だの浮かれてること自体が違ってるんだ! くのをやめるのは当然だろ!」
「達也さん、やめなさい!」
私が割って入ったが、達也の興奮は止まらなかった。
「俺がでどれだけ恥をかいてるか、おたちにわかるか?! をげて、値踏みされて、それでも族のために必になってるんだ! それを、子どものおにまでれみの目で見られて……ふざけるな!」
「あたし、お父さんをれんでなんかない!」
がちがり、涙をボロボロとこぼしながら叫んだ。
「ただ、お父さんとお母さんが毎ピリピリしてて、息が苦しいだけだよ! あたしのせいで喧嘩しないでよ!」
はリビングをびし、廊をって自分の部へ逃げ込んだ。
バタン、と激しくドアが閉まり、鍵がガチャリとかけられる音が響いた。
静まり返った卓に、え切った焼き魚の匂いだけが残されていた。
達也は荒い息を吐きながらち尽くしていたが、やがて自分ののひらを見つめ、力なく座り込んだ。
自分の無力からたつ当たりだと、彼自が番よくわかっているはずだった。