"今回は、探さない" 第4話
あとと残の数字
その夜、族が寝静まった夜、私はでリビングのテーブルに計簿と通帳を広げていた。
卓を叩くプラスチックの乾いた音が、静かな部に落ちる。
宅ローンの引き落としが、毎万千円。
の学受験に向けた塾代が、万千円。
学の男の学資保険と教育積が、万円。
費、通信費、費、管理費……。
支をどんなに切り詰めても、毎万円くが確実に座から消えていく。
達也の持ち帰った退職と、がの現の流資産。
計算の液晶画面に表示された数字は、酷だった。
――あと、。
達也が言っていた「ヶ」は、甘い見通しだった。
のボーナス払いに設定していたローンの加算分を考慮すれば、ヶ半で座の底が見える。
そのを過ぎれば、子どもたちの教育費にをつけ、最はを放す選択肢が現実を帯びてくる。
スマートフォンをに取り、画面を点灯させた。
佐野から送られてきた求ページのURLが、メッセージアプリの画面にっている。
『応募受付終まで、あと』
つのカウントダウンが、暗ので私を挟み撃ちにしていた。
あと言、「佐野の会社で募集があるよ」と伝えるだけで、のタイムリミットは消滅する。
達也はびつくだろう。
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企業のグループである佐野の推薦があれば、採用される確率は極めてい。
すべてを元通りにできる鍵を、私は確かに握っていた。
カチャリ、と玄関のドアがく音がした。
私は慌てて通帳を閉じ、画面を伏せた。
廊を擦るようない音がづき、リビングのドアがいた。
入ってきた達也は、ネクタイをし、ワイシャツの第ボタンを引きちぎるようにした。
髪は乱れ、目のには濃い隈が張り付いている。
「……起きてたのか」
「おかえり。遅かったのね」
達也は返事をせず、キッチンの蔵庫から麦茶を取りし、コップも使わずに喉を鳴らしてんだ。
首が微かに震えているのが見えた。
「ハローワークの帰り?」
「……民の斡旋会社も回ってきた」
達也は背を向けたまま、ぽつりと言った。
「類で落とされた。社。……代半の営業なんて、ほど余ってるそうだ。代の担当者に、『マネジメント経験はおありですが、プレイングマネージャーとしての具体な即効性が見えません』って言われたよ。あんな、息子の友達みたいなガキにだ」
達也の背が、さく丸まっていた。
かつて庭ので見せていた威厳や、嫌を装うことでを支配しようとしていた傲さは、そこにはなかった。
ただ、社会から「おはもう必ない」と突きつけられたの男の、剥きしの疲労と怯えだけがあった。
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達也が振り返り、私を見た。
その瞳の奥に、かつて見たことのない縋るようながあった。
『お、本当は何かってるんじゃないのか』
『誰かに頼んでくれたんじゃないのか』
言葉にはならなかったが、その線がそう叫んでいるのが痛いほどわかった。
、彼が困った顔をするたび、私はその線に耐えかねてを差し伸べてきたのだ。
「丈夫よ、私が何とかするから」と。
その言を言えば、今夜のこの苦痛から、達也も、そして私自も解放される。
私はテーブルので、スマートフォンの角を指がくなるほどく握りしめた。
喉の奥がカラカラに乾いていた。
「……お呂、温め直そうか」
私がにしたのは、それだけだった。
達也の瞳から、すっとが消えた。
彼は乾いた笑いをつ漏らすと、力なく首を振った。
「いや、いい。シャワーだけで済ます」
達也が脱所へと消えていく。
閉まったドアの向こうから、シャワーのたいがを叩く音が聞こえ始めた。
私はテーブルのにスマートフォンを置いた。
画面にはまだ、佐野の会社の求ページがかれたままだ。
あと。
達也が自力で顔をげるのが先か、それとも、がの底が抜けるのが先か。
私は消灯したリビングの暗ので、静かに目を閉じた。