"今回は、探さない" 第3話
パスタの湯気とつの求
翌週の曜、私は版社のくにあるイタリアンで、佐野とランチをとっていた。
佐野は私とほぼ同世代で、以は同じ文芸誌の編集部で机を並べていた男だ。
に通信系企業のアライアンス部に転職し、現は広報企画と法営業を束ねるグループをしている。
当たりが柔らかく、業界内の報に誰よりもるい。
「でさ、麻ちゃん。達也さんの件、づてに聞いたよ」
茹でたてのアラビアータをに運びながら、佐野がさらりと言った。
私はフォークを止め、ナプキンで指先を拭った。
「どこから聞いたの?」
「業界は狭いからね。部品メーカーの事業撤退、先週の経済ニュースにもさく載ってたし。達也さん、法営業筋でやってきただろ? 代半の再就職は、正直このご世かなり厳しいよ」
「……そうね。実してる」
佐野はグラスのをむと、胸ポケットからスマートフォンを取りし、画面をタップして私に向けた。
「これ、見てみて」
画面に表示されていたのは、佐野の会社の途採用ページだった。
『法ソリューション営業部・シニアアカウントマネージャー募集』。
条件の欄に並ぶ数字を見て、私はさく息を呑んだ。
提示されている定収は、百万から百万。
達也がの会社で貰っていた額の、およそ割に相当する。
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福利もく、業務内容もこれまでの械・通信器の営業経験が分に活かせるポジションだった。
「ちょうど昨、うちの役員会議で枠がつ増えたんだ」
佐野がを乗りし、声を潜めて言った。
「即戦力で、ある程度臭い営業もってる代半を求めてる。達也さんの職歴、ぴったりだとうんだよね。麻ちゃんが『このなら違いない』って推薦してくれるなら、俺が直接、営業本部に履歴を渡しするよ。類選考は実質パスできるし、次面接もかなり駄を履かせられる」
臓がきくねた。
喉の奥から、「お願い」という言葉がびしそうになった。
これを達也に持ち帰れば、今夜の張り詰めた空気は瞬で消える。
もするだろう。
達也は自信を取り戻し、族は以の平穏を取り戻せる。
佐野の好に甘え、私がをげて推薦状をけば、すべてが解決するのだ。
これまで、私がずっとそうしてきたように。
だが、私の指先は、テーブルのでかなかった。
「……佐野」
「ん?」
「これ、公求だよね?」
「まあね。昨オープンにしたばかり。末には締め切るけど、応募は殺到するとうよ。だからこそ、麻ちゃんの紹介でルート通した方が確実だって」
私はゆっくりと息を吐きし、佐野のスマートフォンを押し戻した。
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「ありがとう。すごくいい話だとう。……でも、私の名で推薦するのはやめておく」
佐野はフォークを止めて、信じられないものを見るような顔をした。
「は? 麻ちゃん、何言ってんの? 旦が無職になりかけてるんだよ? 使えるカードを使わないでどうするのさ」
「達也が自分でこの求を見つけて、自分で応募類を作って、自力でエントリーするなら止めない。でも、私があなたの名を使って裏をけることはしない」
「がわからないよ」
佐野の眉が寄った。
「夫婦だろ? コネを使うのが悪候の嵐を避ける恵じゃないか。張ってるじゃないだろ」
「じゃないの」
私は自分の膝ので、きつく握りしめた拳を見つめた。
「彼はずっと、私がけたドアを通ってきたの。今回も私が裏を作ったら、彼は、『妻のりいに拾ってもらった男』としてきることになる。それがどれだけ彼の自尊を削るか、きっと本は気づいてない。……それに、私ももう、夫ののプロデューサー気取りでいるのをやめたいの」
佐野は呆れたように息を漏らし、背もたれに体を預けた。
「たいんだか、変なところで頑固なんだか、昔から変わらないね。……まあいいけどさ。締め切りは今末、あとだ。システムが自で閉じたら、俺だってどうにもできないからね」
「うん。わかってる」
運ばれてきたコーヒーの苦が、喉の奥にく残った。
元には、完璧な解決策がある。
それを使わずに見送ることが、どれほど残酷な選択なのか。
答えのない問いが、ので渦を巻いていた。