"作文の余白に書かれた秘密" 第15話
削除ボタンの青い
私は席をち、教壇へと歩きした。
通気から吹きす温の音と、徒たちの浅い呼吸の音だけが聞こえていた。
教壇のにつと、余りのクラスメイトと、そのろに並ぶたちの線が斉に私へと注がれた。
私は原稿用を教卓のに置かなかった。
制のブレザーの内ポケットから、台のスマートフォンを取りした。
教方から、いつぶやきが漏れた。
「携帯話を持ち込んでいるのか」
「授業に何をする気だ」
保護者たちの審そうな線が先に向いたが、先は腕を組んだまま、何も言わずに私をじっと見つめていた。
私はスマートフォンを、教卓の横にある型モニターの接続ケーブルに差し込んだ。
ピッとい子音が鳴り、黒板の隣に据え付けられた型モニターが青くった。
画面に映しされたのは、つのウェブブラウザだった。
タイトルバーには、はっきりとその文字が表示されていた。
『森先・対応データベース』
教のが、ざわりと揺れた。
千里が目を見張り、健太が息を呑んだ。
悠斗と美緒だけが、を向いたままじっとその画面を見つめていた。
画面には、私たちがこれまでに蓄積してきた膨なテキストが並んでいた。
森先の癖、徒たちの庭事、夜に誰がどの作文に赤文字をき込んだかのログ。
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教を騒がせ、千里を怯えさせ、健太を逆させた「全の先」の正体が、剥きしのデータとなって全員のに晒されていた。
「これ、何……?」
ろの保護者の誰かが声を漏らした。
私はマイクを使わず、喉の奥から声をした。
「森先は、休職していません」
私の第声に、教のざわめきがぴたりと止まった。
「先は、もうこの学には戻りません。教育委員会に異届をして、度とこの教壇にはたないと決めました」
徒たちの顔に、激しい揺がった。
「嘘だろ」「なんで」という声ががりかけたが、私はそれを遮るように言葉を続けた。
「病気じゃないんです。先のを壊したのは、私たちでした」
私は画面をスクロールさせた。
何千にも及ぶ、徒たちの相談の記録と、それに対して先がき残した膨な赤ペンの言葉。
「私たちは、先が優しいのをいいことに、自分の庭の満や、友達への嫉妬や、誰にも言えない痛みを、全部先に押し付けていました。『先なら助けてくれる』『先なら分かってくれる』って、そうやって先をのとしてではなく、都のいいのゴミ箱として消費し続けたんです」
指先が震えていた。
けれど、声だけは議なほど澄んでいた。
「先がいなくなって、怖かった。誰も私たちの裏側を見てくれないのが耐えられなくて、私たちはこのデータを作りました。
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先の言葉を真似して、先の調を盗んで、お互いに赤ペンで言葉を配りいました。でも――」
私はモニターから線をし、教の窓際、かつて森先がっていたはずの空を見つめた。
そこには誰もいない。
ただ、のたいが埃を照らしているだけだった。
私はポケットから原稿用を取りし、いた。
そこにかれた、たった。
「森先」
私は空っぽの教壇の隅に向かって、その言葉を読んだ。
「私たちが先の言葉を真似し続ければ、先はいなくならないとっていました」
息を吸い込む。
胸の奥が張り裂けそうに痛かった。
けれど、この言葉だけは、のを借りてはいけなかった。
「……でも、これは私の言葉で、先の言葉じゃありません」
教のが、完全な静寂に包まれた。
すすり泣く声すら消えていた。
誰もが、自分たちが失ってしまったものの本当のきさと、自分たちが犯した甘えの罪を、突きつけられていた。
私はスマートフォンを操作した。
ブラウザの管理画面をき、赤い警告枠で囲まれたボタンに親指をねた。
『ドキュメントを完全に削除しますか? この操作は取り消せません。』
私は悠斗を見た。
悠斗は、さく頷いた。
美緒を見た。
美緒もまた、涙で濡れた瞳でまっすぐに私を見つめ返した。
私は、画面のボタンをく押し込んだ。
画面が瞬く滅し、次の瞬、無質なのエラー画面に切り替わった。
『お探しのファイルはしないか、削除されました。』
森先の霊は、んだ。
私たちが自分たちので作りし、自分たちのさを隠すために使っていた偽物の神様は、これで完全に消滅した。
キーン、コーン、カーン、コーン。
沈黙を切り裂くように、授業の終を告げるチャイムが鳴り響いた。
誰もかなかった。
先だけが、静かに教壇のに歩みて、黒板にかれた『誰にも言えなかった』の文字を、黒板拭きで気に消しった。
いチョークのが、煙のようにい散った。