みかん小説
本棚

"作文の余白に書かれた秘密" 第10話

居に落ちていた皿

「とも、荷物を持ってついてきなさい」

先の声には、激昂も揺もなかった。

ただ、の朝の空気と同じ徹さだけが張り詰めていた。

連れてかれたのは、職員の隣にあるさな会議だった。

普段は保護者との面談や、登の徒が別登の際に使う部だ。

が入っておらず、吐く息がく濁った。

先はから回収した片の束を、パイプテーブルの央に無造作に置いた。

枚くある便箋のすべてに、森先の跡を真似た赤ペンのがかれている。

「悠斗。これは全部、あなたがいたのね」

悠斗はパイプ子にく腰掛け、両を膝のに挟んだまま、頑なに顔をげなかった。

「……先の代わりにいただけです」

「森先は、こんなを徒の駄箱に投げ込むようなだったかしら」

「アンタに何がわかるんだよ!」

悠斗が子をガタッと鳴らしてちがった。

机を両で叩き、先を睨みつける。

「週しかこのクラスにいないくせに! 教科の解説しかしないアンタに、森先の何がわかるんだよ! 先は……先だけが、俺ののこと……!」

悠斗の叫びが、に途切れた。

彼の喉がひゅっと鳴り、胸が激しくした。

「悠斗……」

私が声をかけようとすると、悠斗は乱暴に自分の制の袖で目元を拭った。

広告

けれど、度溢れしたの濁流は、もう止まらなかった。

「……毎晩、皿が割れる音がするんだ」

悠斗の声は、急激に掠れてさくなった。

「親父と母親が、婚の話で鳴りって……『おを引き取るのは嫌だ』って、でお互いに押し付けってる。俺が部のドアを閉めて布団を被っても、全部聞こえるんだよ。『悠斗がいるからがかかる』『おが引き取れ』って……!」

部のの空気が、凍りついたように止まった。

「俺は、消えたいんだよ」

悠斗は机のに両をつき、散らばった片を見つめた。

「教にいるときだけ、息ができる気がしてた。森先が作文の最に『辛いときは保健でお茶でもみましょう』っていてくれたとき、俺、きててもいいんだってえたんだ。なのに……先、急にいなくなっただろ」

悠斗の指先が、枚の便箋を握りしめた。

「俺、怖かったんだよ。このクラスの全員が、自分の痛いところを誰にも言えなくなって、して、壊れていくのが。健太が親父に殴られてるのを見て、自分のとなって吐きそうだった。『逃げてもいい』って……健太にいたんじゃない。俺が、誰かにそう言ってほしかったんだよ……!」

便箋のに、粒の涙がぽたぽたと落ちて、赤いインクを滲ませていった。

悠斗は怪物を演じていたのではなかった。

親からを拒絶され、最に縋りついた「森先」

という全帯を奪われて、溺れかけていたのだ。

溺れながら、必に周りのを掴もうとして、その爪で相を引き裂いていたのだ。

先は、泣き崩れる悠斗を叱責しなかった。

ただ、静かにちがり、会議のロッカーをけた。

そこから取りしたのは、昨私に見せた、森先の擦り切れた教案ノートだった。

「悠斗」

先はノートを悠斗の目のに置いた。

「見なさい。これが、あなたたちが求めていたものの正体よ」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: