"作文の余白に書かれた秘密" 第7話
のブラインド
放課の舎は、苦しい静けさに包まれていた。
私は職員へ向かう階段の途でち止まっていた。
何を言えばいいのか分からなかった。
「ごめんなさい、私たちがやりました」と名乗りるべきなのか。
それとも、悠斗を庇うためにシステムのエラーだと嘘をつくべきなのか。
指先は氷のようにたかった。
階の廊を歩いていると、突き当たりにあるのドアが、わずかにいているのが見えた。
すりガラスのブラインドの隙から、黄い内のかりが漏れている。
「――ですから、徒の指導記録としてな違反です」
先の声だった。
いつもより段く、張り詰めている。
私は息を殺し、廊の曲がり角のにを潜めた。
「森先の名を使った悪質ななりすましです。男子徒ので暴力汰まで起きました。これ以、放置することはできません。警察への相談も含めて、学として毅然とした対応を取るべきです」
類を机に叩きつけるような乾いた音がした。
だが、返ってきたの声は、酷く濁って疲れていた。
「先。その件は……もう、終わりにしてくれないか」
「終わり、ですか? 徒たちは傷ついています! 森先が戻ってくれば解決する問題ではありません!」
「戻らないんだよ」
が遮った。
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そのくい言に、のの空気が止まったのが、廊まで伝わってきた。
「森先は、もうこの学には戻らない」
私の臓が、どくりと嫌な音をててねた。
「……どういうことですか。休職の期限は、来の保護者会までだと」
「あれは対な説だ。保護者を揺させないためのな」
が擦れる音が聞こえた。
「森先からは、休職に入る週の点で、すでに退職願と県への異届がされている。教育委員会も受理した。彼女は度と、この教壇にはたない」
嘘だ。
ので、誰かの声が響いた。
嘘だ。先は、し疲れて休んでいるだけだって。
「なぜ……病気ではないのですか」
先の声が、かすかに震えていた。
「精神な消耗だ」
の吐息が漏れた。
「っているだろう。彼女は徒の作文を、夜まで持ち帰って添削していた。LINEの相談窓の番号を教え、庭環境の悪い徒からの話を休に何も受けていた。昨度だけで、彼女が個にやり取りした徒の相談記録は数千件に及ぶ」
の革靴がを擦る音がした。
「徒たちは、彼女を頼りにしていたんじゃない。彼女というに、自分たちのドロドロしたを全部吐きして、ただ消費していたんだよ。森先は限界だった。休職に入る直、彼女はこの部のに崩れ落ちて、私ので泣き叫んだんだ。
『もう、あの子たちの声を聞きたくない。助けてくれ』とな」
元のが、急激に傾いたような気がした。
界が真っ暗になる。
の奥で、キーンという属音が鳴り響いていた。
私たちは、先を待っていたのではなかった。
先を追い詰めたのだ。
「先なら分かってくれる」「先なら助けてくれる」。
その無邪気で底なしの甘えが、ののを完膚なきまでにすり潰し、逃げさせるところまで追い込んだのだ。
私たちは、被害者ですら委ねられた子供ですらなかった。
先を壊した、加害者だった。
ガチャリと、ドアノブが回る音がした。
逃げるもなかった。
からてきた先が、壁にをついてへたり込んでいる私を見ろしていた。