"父の葬儀で離婚を迫った夫" 第22話
『本、座の再発プロジェクトが正式に着した。 現の仮囲いに、君が修正してくれた設計のコンセプトパネルが掲示されている。 美優の子供は順調に育ち、先週退院した。母と美優ので毎のように揉め事は絶えないが、これが俺の背負うべき現実なのだとっている。 ……彩佳。君がかつて俺に与えてくれていたすべてのものに、今さらながら、から謝している。本当に、ありがとう』
画面を見つめたまま、私は数秒、ち止まった。
りも、みも、未練も、そこにはなかった。 ただ、い過の来事として、静かに腑に落ちていくのをじた。
私は返信を打たなかった。 スマートフォンの源を落とし、キャメルのウールコートのポケットにく滑り込ませた。 彼のは彼が引き受け、私のは私が引き受ける。 もう、交わることのない本の線だった。
私はで買ったさな菊の束を抱え、墓へと続く緩やかな坂をっていった。
の柔らかな陽が、々のから零れ落ちている。 条のさな墓のにち、枯れたを片付け、たいでを清めた。 しい菊を向け、線にをつける。
澄んだ煙が、真っ青な空に向かって真っ直ぐにちっていった。
私はをわせ、目を閉じた。
「お父さん。……婚届、してきたよ」
ので語りかける。 胸の奥に、かつて父がを撫でてくれたの、あのの温もりが蘇る。
目をけると、墓に刻まれた『条』の文字が、のを浴びて温かく輝いていた。
私はわず、ふっと吹きすように笑った。 そして、誰に聞かせるでもなく、澄み切った声で、穏やかに付け加えた。
「でもして。……今回はね、誰かに捨てられたんじゃないの」
空を見げる。 どこまでも続く青空が、私のくを果てしなく照らしていた。
「私が、自分で選んで歩きしたんだよ」
たいが、私の髪を優しく揺らした。 私は背筋を伸ばし、度も振り返ることなく、のへと歩きした。