"廃墟旅館の双子と初恋の再会" 第19話
「そうだよ!」 結菜がニカッとい歯を見せて笑った。 「千尋ちゃんがいるし、そもそも私たち、最の双子だもん! いざとなったらで助けってきていくからさ!」 菜も腕を組んで胸を張った。 「そうそう! だから虎次郎おじさん、何の置きもなく、全力でママにプロポーズしてきなよ!」
娘たちの眩しいほどの成と、い絆のさに、俺の目からい涙が零れ落ちそうになった。 守られるばかりだったさな子どもたちが、いつのにか、臆病なの背を力く蹴っばしてくれるまでにきくなっていたのだ。
「よし! じゃあ、今すぐママを呼んでくるね!」 「えっ!? ちょ、待て! 今すぐ!?」
俺の制止など聞く持たず、は「ママー!」「絵里さーん!ちょっと来てー!」と叫びながら、猛ダッシュで厨の方へとりっていった。 の準備も、気の利いたセリフを考えるも、何つ与えられなかった。 臓が破裂しそうなほどのスピードで打ち鳴らされる、数秒もしないうちに、エプロン姿の絵里が、息を切らして勝から連れされてきた。
「な、何なの千尋ちゃん、急に引っ張ったりして……あら、虎次郎君? こんなところでどうしたの?」
議そうに首を傾げる絵里。 その背では、物に隠れた千尋、結菜、菜のが、拳を握りしめて「いけ!」「言え!」と激しくジェスチャーを送ってきている。
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逃げなんて、もうどこにもなかった。 、胸の奥底で燻り続けていたいが、マグマのように喉元までせりがってくる。 俺は背筋をピンと伸ばし、絵里の正面にち、く息を吸い込んだ。
そして――何の飾り気もない、器用な言葉を、真っ直ぐに彼女の瞳へとぶつけた。
「……絵里さん。俺と……今度こそ、族になっていただけませんか?」
夕暮れの裏通。 が吹き抜け、業務用の換気扇が静かに回る音だけが響いた。 何のひねりもない、とほとんど変わらない、あまりにもストレートな告。
絵里は目を見張り、ぽかんとをけて俺を見つめていた。 だが――次の瞬、彼女の瞳から粒の涙がポロポロとこぼれ落ち、その元が、まるでのが綻ぶように、このなく幸せそうに微笑んだのだ。
「……結菜と菜と、千尋ちゃんがね」 絵里は胸ので両をぎゅっと握りしめ、震える声で言った。 「『私たちはもう派なだし、何があっても丈夫だから、ママも幸せになりなよ』って……背を押してくれたの。……あの子たちの言葉を聞いて、私、やっと……自分の気持ちに、正直になってもいいのかなって、えたの」
絵里は歩、俺へと歩み寄り、々とをげた。
「……こちらこそ。私と……私の子どもたちと、族になってください」
物から、「「やったああああああああっ!!」
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」という、の割れんばかりの歓声が夕空へと突き抜けた。 回りして、という途方もないをかけてしまったけれど――俺たちはようやく、本物の夫婦に、本物の族になれたのだった。
それから、さらに数の歳が流れた。
俺と絵里の結婚をに、千尋、結菜、菜のは、名実ともに『乃湯』の正式な板娘となった。 揃いの若の着物にを包んだが並んでお辞儀をする姿は、方の報番組や旅雑誌で『温泉の美姉妹がいる奇跡の宿』として々に特集され、旅館の名度は全国区へとねがった。
だが――女である千尋は、がの旅館の跡を継ぐことはなかった。 歳になった千尋は、々、この町で結婚式を挙げて嫁ぐことが決まっていたのだ。
その結婚相は――あの幼馴染・守の、息子だった。
守の父親がかつて経営していた巨額の負債を抱えた巨旅館『』の廃墟は、個の力では到底再建できる規模ではなかった。 だが、俺たちのSNS投稿をきっかけに温泉に国内から観客が爆発に戻ってきたことで、資系ホテルグループがそのポテンシャルに目をつけ、買いのつかなかったあの広な敷と建物を丸ごと買い取ってくれたのだ。 そして、守が「このホテルの再にを懸けたい」
と烈に応募した結果、グループでのの厳しい研修を経て、守は見事にそのホテルの『雇われ総支配』へと抜擢された。