"廃墟旅館の双子と初恋の再会" 第12話
両親の言い分は百パーセント正しかった。 資もない、経営ノウハウもない、町自体に集客力もない。ただの素の無謀ないつきに過ぎない。 だが、ここで引きがるわけにはいかなかった。 俺はく息を吸い込み、をげた。
「……がないのは分かってる。だから、業者に丸投げして何千万円もかけるつもりはない。自分たちので、できるところからしずつ直していくんだ。……頼むから、ある男に会うまで待ってくれ」
そのの午。 俺が話で呼びし、実の茶のに駆けつけてくれたのは、作業着姿の恰幅の良い男だった。
「おーい、虎次郎! 絵里ちゃん! 久しぶりだなあ!」
作業着の埃を叩きながら、い歯を見せて豪に笑った男。 俺たちと同じく、学から学までを共に過ごした同級――守(まもる)だった。
この温泉の学は過疎化がんでおり、俺たちの学はクラスどころか、学全体でもいなかった。 だからこそ、守を含めた幼馴染の絆は、兄弟よりも濃密で特別なものだったのだ。
絵里は守の姿を見るなり、懐かしさに目を輝かせたが、次の瞬にハッとして言葉を詰まらせた。 「……守君。久しぶり……。あの、守君のところの、旅館……えっと……」
絵里が言葉に詰まるのも無理はなかった。 守の実は、かつてこの温泉の象徴だった、客数百を超える超型老舗旅館『グランドホテル』を経営していたのだ。
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客らずのがとは比べ物にならない巨な名旅館で、誰もが「の旅館がすべて潰れても、あそこだけは絶対にき残るだろう」と信じて疑わなかった。 だが、バブル崩壊の余波を受け、うちの実よりも遥か、守がの頃に負債数億円を抱えて鮮烈に倒産していたのだ。
廃墟と化したの無残な姿をで見てきた絵里は、何と声をかけていいか分からなかったのだろう。 だが、守は気にするもなく、太い腕を組んでカラカラと笑った。
「あはは! 絵里ちゃん、そんな気を使ってくれなくていいよ! うちの旅館が潰れたのは、俺がので、俺が継ぐの話だからさ。当は親父が債権者や解雇された従業員たちに詰め寄られて、本当に修羅だったけどな……俺自はどこか事というか、借取りから逃げるのに必で、そこまでショックを引きずってる暇もなかったんだよ」
そうあっけらかんと笑う守だったが、当の苦労は半なものではなかったはずだ。 実が破産して豪邸を差し押さえられ、でボロアパートへ引っ越すことになり、守は方のに通い続ける交通費を浮かすため、を退して元の務へと就職したのだ。
「守を呼んだのはさ」 俺はい茶を守のに置きながら、真剣な差しで切りした。
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「うちの旅館の再を伝ってもらいたいからなんだ。守は今、務でリフォームのプロとして仕事をしてるだろ? うちの旅館はそこそこの規模だし、躯体(骨組み)さえしっかりしてれば、自分たちので直せるんじゃないかってってさ」
守は目を丸くし、それから面そうにニヤリと元を歪めた。 「……へえ! 自分たちのでリノベーションか! 無茶苦茶言うな、虎次郎は昔から! ……でも、面そうじゃねえか。専な配管や気系統は俺の務の仲を通す必があるが、壁の補修やの張り替え、塗装くらいなら、俺の指導で素でも分できるぞ」
「本当か、守!?」 「ああ! ちなみに俺は今、めちゃくちゃい嫁さんと学の息子に囲まれて、貧乏だけど最に幸せに暮らしてるんだ。……昔の借の苦いいなんか、このでしい旅館を蘇らせて、綺麗さっぱりきしてやるよ!」
守の力い言葉に、隣で固唾を呑んで見守っていた絵里の表が、ふっと柔らかく綻んだ。 俺たちの気にあてられたように、絵里の瞳にもさな希望のが灯っていた。
「よし……! それじゃあ、これからこので、力をわせて頑張ろう!」 俺がテーブルのにを差しすと、守が「おうよ!」と太い掌を力くねた。 そして、絵里もし照れくさそうにはにかみながら、細くいをそのにそっとねてくれた。