"廃墟旅館の双子と初恋の再会" 第11話
「私には、帰る所も、頼れる親も、何もない……。途方に暮れて駅のベンチに座っていたらね、ふと、この町のことをいしたの」 絵里は涙を拭い、顔をげた。 「昔、虎次郎君の旅館の広いお庭で、みんなでり回って鬼ごっこしてた頃のこと……あの頃は、貧しかったけど、毎が本当に楽しくて、温かかったなって。……ここに来たら、あの頃のいに触れたら、もう度だけ、頑張る力が湧いてくるんじゃないかって……そうって、に乗っちゃったの」
「絵里ちゃん……」 俺の胸は、張り裂けんばかりの痛みに軋んだ。 何の入れもされず、朽ち果てて廃墟となった実の旅館。 すがるようないでたどり着いた彼女が、あの変わり果てた建物を目にした、どれほどの絶望をわったのか、像するだけで居たたまれなかった。
「虎次郎君が謝ることじゃないよ」 絵里は俺の表を読み取ったように、慌てて首を振った。 「でもね、あの頃の面がすっかりなくなった旅館を見たら……なんだか、プツンとの糸が切れちゃって。もう、何もかもどうでもよくなっちゃったの。とにかく横になって、しだけ眠りたいとって……。気がついたら、虎次郎君たちが目のにいた。……虎次郎君の顔を見られて、昔と変わらない声を聞けて、何ぶりかにぐっすり眠れたから……私、今はすごく元気だよ。
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おかげで、からまた頑張れそう。本当に、ありがとうね」
絵里はそう言って、ちがろうとした。 これ以迷惑はかけられないと、自らを引いて、このをてこうとしているのだ。
まただ。 俺は歳のあのと同じように、ただち尽くして、傷つき疲れ果てた彼女の背を見送るだけなのか。 何もできず、何も救えず、ただ悔を抱えてきていくのか。 そうった瞬、俺の胸の奥底で、い塊が爆発した。
「――待てよ!!」
俺はちがり、わず絵里の細い首を掴んでいた。 絵里が驚いて目を丸くして振り返る。
「俺……旅館を、再しようとってるんだ!」 「……え?」
「うちの潰れた旅館を、俺のでもう度リノベーションして、営業を再させる! ……だから、絵里ちゃん! 頼むから、俺を伝ってくれよ!」
からまかせの、そのしのぎの嘘だったかもしれない。 だが、その言葉をにした瞬、止まっていた俺のの歯が、ゴトゴトと凄まじい音をてて噛みい始めたのを、俺は確かにじていたのだった。
「……え? りょ、旅館を……再するって……?」
絵里は首を掴まれたまま、信じられないものを見るように目を丸くして固まっていた。 俺は掴んでいたをハッとし、を掻きながら、だが決して線を逸らさずに言葉をねた。
「そうだ。再させるんだ。……絵里ちゃん、自分には何の力にもなれないとかってるだろ? でもな、双子の夜泣きが落ち着くまで、働きなんて見つかるわけないじゃないか。
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預ける保育園だって、所も定まってない状態じゃすぐには入れない。……だったら、ここにいろよ! うちの旅館の再を伝いながら、子どもたちをみんなで育てればいいじゃないか!」
「で、でも……私、この温泉にずっと居座るわけには……」 「いいじゃん! 昔からの幼馴染が助けって何が悪いんだよ! 親父もお袋も、千尋も歓迎してるんだから、のの言わずに甘えろ!」
俺の猛烈なゴリ押しと引さに圧倒され、絵里は呆気にとられたように瞬きを繰り返し、やがて噴きすようにさく笑った。 「……ふふっ。虎次郎君、昔からそういうところ、全然変わってないね」
こうして、俺は絵里と双子を実に引に引き止めることに成功した。 だが――で言うのは簡単だが、現実はそれほど甘くはなかった。
翌朝、朝の席で俺が「実の旅館をリフォームして再させる」と宣言した瞬、父と母の猛烈な反対をらったのだ。
「馬鹿野郎!!」 父は持っていた茶碗をドンと膳に叩きつけた。 「お、旅館の経営を何だとってるんだ! 客の掃除すらろくにしたことのないおが、廃墟になった旅館を再させるだと!? 温泉自体がんでるんだぞ! 何千万という改修費をどこから持ってくる気配だ! 絶対に認めん!」
母もまた、痛な顔で首を横に振った。 「そうよ、虎次郎。気持ちはありがたいけれど、もうあの旅館で借を背負うのは懲り懲りなのよ……」