"廃墟旅館の双子と初恋の再会" 第10話
……のに、フリースクールに通い始めて、そこで優しい先や友達に会えて、やっと『もう度、を信じてもいいのかな』ってえるようになったの」
絵里はく息を吸い込み、言葉を続けた。 「をて就職した職の先輩から、真面目で誠実そうなを紹介してもらって……結婚して、結菜と菜が私の元にまれてきてくれたの。……あの子たちを産んだ、私、に誓ったんだ。『お母さんみたいには絶対にならない。この子たちだけは、私が命に代えても絶対に幸せにするんだ』って……。そんな層なことを考えてたのにね」
絵里の元に、自嘲なたい笑みが浮かんだ。 「……やっぱり、私には無理だったみたい」
絵里が語ったそのの結婚活は、壮絶を極めるものだった。 双子の結菜と菜は、どちらか方が夜泣きを始めると、必ずもう方も連鎖してがついたように泣き叫びす体質だった。 夜通し響き渡る、ステレオのような甲い赤ん坊の泣き声。 それを、絵里は毎、きりで至距で浴びせられ続けていたのだ。 眠はにも満たなくなり、性な眠と疲労困憊から、やがて固形物が喉を通らなくなっていった。
そんな極限状態の絵里を、同居していた元夫の母親――義母は、容赦なく責めてたという。 『子どもが泣き止まないのは、母親であるおの領と来が悪いからだ』 『母親失格ね。
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息子を寝にしてどうする気なの』 そして、エリートサラリーマンだった元夫は、妻を庇うどころか、完全に実母の側に同調したのだ。
「元夫はね、誰もがってるようなきな会社に勤めていて、私にはもったいないくらいのだったの。子どもがまれるまでは、本当に優しかったんだけどね……」 絵里の指先が、りと悔しさでくなるほど震えていた。 「双子の夜泣きが酷くなると、あの、吐き捨てるように言ったのよ。『おのせいで仕事に支障がる。おはにいる専業主婦で楽ができてるんだから、せめて夜の管理くらい完璧にしろ。……しばらく実に帰ってろ』って」
「……何だと!?」 俺はわずテーブルを叩きそうになり、慌ててを止めた。 「の子どもだろうが! 父親の自覚はどこへったんだよ!」
「あのには、最初から父親の自覚なんてなかったんだとう」 絵里は力なく首を振った。 「『週末に回くらい顔を見にってやるから、実の方がおも親に甘えられて楽だろ』って体よく追いされたの。……その、婚の文字がをよぎったわ。でも、結菜たちももうすぐ歳になる。そろそろ夜泣きも収まるはずだし、もうしだけすれば、また元の優しい夫に戻ってくれるかもしれない……そうって、私は言いたいことを全部み込んで、実へを寄せることにしたの」
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だが――実に帰った絵里を待ち受けていたのは、さらなる孤独の絶望だった。
「うちのお父さんね……私がを卒業したあと、すぐにしい奥さんと再婚してたの」 「え……そうだったのか?」 あんな壮絶な裏切りを経験した父親が、再婚などするはずがないと俺は勝にい込んでいた。俺の驚きを察したのか、絵里は苦笑いを浮かべた。
「うん。お父さんとしいお母さんのには、男の子もまれてね。私とはひと回り以も歳がれた弟がいるの。……しいお母さんも、普段は気さくで良いだったんだけどね。いざ、双子を抱えて実の玄関のにってみたら……から、お父さんとお母さんと弟の、楽しそうな団らんの笑い声が聞こえてきたの」
絵里は瞳を伏せ、ポロポロと涙をこぼした。 「その笑い声を聞いた瞬……ああ、ここにはもう、私の居所なんて最初からどこにもないんだって、体の芯までえ切っちゃって。……何も寝てなくて、もおかしくなってたから、そのまま元夫に『婚してください。親権さえくれれば、慰謝料も財産分与も養育費も何もりません』って、勢いだけで話してサインしちゃったの……」
養育費の支払いすら拒絶され、絵里の元に残ったのは、独代に貯めていたわずかな普通預だけだった。 アパートを借りて敷礼を払い、必最限のを揃えたら、あっというに消えてなくなってしまうような微々たる額。