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"身重の私を捨てた夫の誤算" 第24話

けれど、それだけで分だった。そのこそが、私を今までかしてくれた最の盾だったのだから。

「おかえり、宮子さん」

エントランスで迎えてくれた神崎が、柔らかな笑顔を浮かべた。 守の顔を覗き込み、指を差しすと、息子がさなで無邪気にそれを握りしめる。

「いい顔をしているね。……復帰の続きはすべて完したよ。君の専用の研究も、以のまま用してある」

「ありがとうございます、神崎さん」

私は礼し、それから胸ポケットから枚の申請を取りして彼に渡した。

「神崎さん。研究所に戻るにあたって、私から組織に対してお願いしたいことは、これつだけです」

神崎が類に目を落とし、微かに目を見いた。 そこには、特別な待遇も、過の補償の請求もかれていなかった。

ただ文。 『過において、野システムズ社名義で登録された全システムのコミットログ、技術仕様、および特許公報における作成者名を、正当な権利者である「堂宮子」へと公式に訂正すること』。

それだけが、静かに記されていた。

「これだけで……いいのかい?」

神崎が尋ねた。

「巨額の損害賠償を請求することも、名誉回復のための々な記者会見をくこともできるんだよ」

「ええ、これで分です」

私は腕ののが子を見つめ、静かに微笑んだ。

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「名は、そのがきて、確かに成し遂げたことの証ですから。私がこの子ので胸を張ってきていくために必なのは、の称賛ではなく、私自の名だけです」

「……分かった。責任を持って、すべての記録をき換えさせよう」

神崎は力く頷き、類を切そうにファイルに収めた。

研究所の庭にると、初のよいが吹き抜け、青々とした々の葉を揺らした。 空はどこまでもく、澄み渡っている。

私はち止まり、ペンダントをそっと胸元に当てて、眩しい青空を見げた。

お父さん、お母さん。 私は、私のでちがりました。 もう度と、誰かのに隠れることも、切なものを奪わせることもありません。

腕ので、守がさなくしゃみをして、パチリと澄んだ黒い瞳をいた。 私を見げ、ふわりとが咲くように微笑む。

「さあ、こうか、守」

私はが子を抱き直し、の射す研究棟の扉へ向かって、確かな取りで歩きした。 私の名を取り戻した、しいが、ここから始まっていた。

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