"元義母の仕送り要求と元夫の嘘泣き目薬" 第9話
必に両で顔を覆い、しゃくりあげながら泣いていた憲吾のスラックスのポケットから、何かがポロリと転がり落ちた。
コロン、コロン、と乾いたプラスチックの音をてて、私の元へと転がってきたさない容器。
それは――誰がどう見ても、販の目薬の容器だった。
「…………」
静寂が、玄関先を支配した。
私がその容器を見ろした瞬、それまでろで腕を組んでいたかず子さんが、猿のような俊敏さで面にびつき、目薬を素くひったくった。そして、真っ赤な顔をして叫んだのだ。
「あ、あんた、何を変な目で見てるのよ!? この子はね、昔から度のドライアイなのよ! 目が痛くて乾くから目薬を差しただけよ! う、嘘泣きなんて、これっぽっちもしてないんだからね!!」
私がまだ言も発していないうちから、関銃のように言い訳をまくしてる元義母。
面に額を擦り付けたまま、目薬を落とした気まずさでピキピキと固まっている元夫。
そのあまりにも陳腐で、滑稽すぎる文芝居の結末に――私のから、乾いた笑いがこぼれ落ちた。
「……ふっ、あはははは」
静かな宅の昼がりに、私の笑い声が乾いて響く。
嘘泣きの具まで準備して、元嫁からを毟り取ろうとする元夫と、それを取り繕おうと必に喚き散らす元姑。その姿は、れを通り越して、もはや悪質な劇を見ているかのようだった。
広告
「おとも、本当にお疲れ様でした。どうぞ、その切な目薬を差しながら、お帰りください」
憲吾とかず子さんは、もはや返す言葉も見つからないのか、恥と屈辱に顔を真っ赤に染め、気まずそうに顔を見わせた。
「お、覚えてなさいよ! あんたみたいな血な女、絶対にバチが当たるんだからね!」
かず子さんは最に負け犬の吠えのような捨て台を吐き捨てると、ちがった憲吾の腕を乱暴に引っ張り、すごすごと実の扉をてっていった。
ざかっていくのけない背を見送りながら、私はドアを固く閉ざし、今度こそ彼らとの因縁が完全に断ち切られたのだと、胸のすくいで確信していた。
しかし――憲吾というの卑劣さは、私の像の遥か斜めをくものだったのである。
あの座事件から数。
実でしいまいの契約類を確認していた私のスマートフォンに、学代の友から本のメッセージと、添付のスクリーンショット画像が届いた。
『ゆかり、これ見て! これ、絶対にあの元旦のことだよね!? 丈夫なの!?』
胸騒ぎを覚えながら画像をいた瞬、私は全の血がサーッと引いていくようなたいりを覚えた。
それは、憲吾が実名にい形で運用している自のSNSアカウントに投稿された、文の告発ポストだった。
広告
《に勤める元妻から『確実に儲かる特別な未公株がある』と執拗に勧められ、族の将来のために全財産を注ぎ込みましたが、すべて嘘でした。結果として全財産を失い、借だけが残りました。エリート員という肩きを信じてしまった私が愚かでした。彼女は今も何わぬ顔での課を続けています。皆様、どうかこの悪質な詐欺師を許さないでください》
そこには、私が職権を乱用してインサイダー報を悪用し、純朴な夫を騙して全財産を奪い取ったかのような、完全な虚偽のストーリーが、劇の主公気取りで事細かに綴られていたのだ。
投稿は瞬くに拡散され、リポスト数は数千件を突破。コメント欄には、事を何もらないネットユーザーたちからの、私や勤務先のに対する痛烈な誹謗傷と、憲吾への同の声が溢れかえっていた。
(……どこまでも、腐りきった男ね)
りよりも先に、徹な理性が私の脳内を支配した。
彼は、自分が犯した「会社のの横領」という犯罪の責任をすべて私のせいに仕てげ、世の同を集めてクラウドファンディングか何かでを巻きげようと企てているのだ。自らの破滅をの破滅で覆い隠そうとする、卑劣極まりないネット私刑の試み。
しかし、私はもう、彼の理尽な暴力に耐えるだけの被害者ではない。
私は即座に、憲吾のSNSアカウントへ向けて、言のも交えないダイレクトメッセージを送信した。