みかん小説
本棚

"元義母の仕送り要求と元夫の嘘泣き目薬" 第6話

気した叫び声に、私は底うんざりした。

「申し訳ありませんが、私たちはすでに法にですので、私にはそのような義務はしません。それでは失礼いたします」

私が通話を切断しようとしたその瞬、受話器の向こうのかず子さんの声が、打って変わってすがりつくような願の声に変わった。

「ま、待ちなさいよ! 切らないで! お願いだから……!」

あまりの豹変ぶりに、私は画面から指をした。すると、今度はわざとらしい啜り泣きの声が漏れ聞こえてきた。

「ゆかりさん、お願いよ……本当に活が苦しいのよ。物価もがって、毎の費にも困っているの。このなんて、病院へくバス代すら値がりして……」

しかし、その涙声に私のが揺らぐことは微もなかった。

私は、結婚していた、彼女の異常な浪費癖を散々見せつけられてきたのだ。

彼女は毎「活が苦しい」と泣きついて仕送りの万円を毟り取りながら、その半を自らの遊興費に注ぎ込んでいた。彼女のSNSアカウントには、級ブランドの作バッグをこれ見よがしに自する写真や、友たちと級温泉旅館やリゾートで豪遊する姿が、頻繁にアップされていたのだ。

極め付けは、の義父が入院していたのことだ。「医療費が払えない」と泣きついてきた彼女のために、私自の貯から数百万円をて替えたのだが、になって、義父が遺していたはずの医療用貯蓄を彼女がブランド品の爆買いで使い込んでいたことが発覚したのである。

広告

そんな過をっていて、同など湧くはずがなかった。私の沈黙を迷いと受け取ったのか、かず子さんはさらに図々しい求をねてきた。

「そうよ! 仕送りが無理なら、別の方法があるわ! あなた、員なんでしょう? 内部のしからない、絶対に儲けできる特別な投資先を、こっそり私に教えてちょうだいよ!」

呆れ果てて、いたが塞がらなかった。

「かず子さん、私が顧客報を漏洩したり、未公の融商品を個に斡旋したりすることは、融商品取引法およびのコンプライアンス、な違法為です。絶対にできません」

退を断たれたかず子さんは、ついに最のカードを切ってきた。話の向こうから、わざとらしいげさな嗚咽が響く。

「うっ……ううっ……ひどいわ、そんなにたくするなんて! 実はね……息子の憲吾が、あなたと別れてからすっかり精神に参ってしまって、うつ病になって会社も休職なのよ! 母親の私まで見捨てられたら、あの親子共倒れになっちゃうわよ!」

母親による、涙ながらの息子の窮状の訴え。

普通のであれば、しは良の呵責を覚える面かもしれない。しかし――あの傲で、自己の塊のような憲吾が、たかが婚ごときで精神を病んで休職するなど、到底信じられる話ではなかった。

広告

「……そうですか。それは変ですね」

私はを切交えずにそう告げると、今度こそ迷うことなく通話終の赤いボタンをタップした。

話を切ったも、リビングのソファで私の胸には割り切れない違が澱のように沈んでいた。

憲吾が精神を病んで休職している――その話が、、私の同を引くための嘘であることは直に分かっていた。だが、なぜそこまで見え透いた嘘をついてまで、なりふり構わずを無してこなければならなかったのか。ただ母親が贅沢をしたいだけなら、にもっとマシな言い訳があったはずだ。

その疑問の答えは、数の夕方、唐突な形でのに晒されることとなった。

私のスマートフォンに、メッセージアプリの通が入った。送り主は、同の同僚であり、かつて同じ部署で苦楽を共にした輩の君だった。彼は現、の提携先として、偶然にも憲吾が勤める堅メーカーへと向だった。

『ゆかりさん、ご無汰しております。突然のメッセージで変恐縮なのですが、元旦さんの件で、至急おに入れておきたいな報が入りました。今、お話でお話しすることは能でしょうか?』

改まった文面に、尋常ではない胸騒ぎを覚えた私は、すぐに彼へ話を折り返した。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: