"元義母の仕送り要求と元夫の嘘泣き目薬" 第5話
私は淡々と、あらかじめ決めていた条件をにした。
「慰謝料の請求は、切しないわ。その代わり、私もあなたから円たりとも請求しない。今にこの類にサインをして、役所に提してちょうだい。それで私たちの関係は、完全に綺麗さっぱり終わりよ」
刻もく、この男との法関係を断ち切りたい。そのためなら、微々たる慰謝料など捨て置いても痛くも痒くもなかった。
私の予の提案を聞いた瞬、憲吾の目がギラリと欲くったのを、私は見逃さなかった。慰謝料を支払うリスクを負うことなく、取りの妻から自由になれる。彼にとって、これほど都の良い話はなかったのだ。
「へっ……それで本当にいいんだな? から泣きついてきたって、絶対に相にしてやらないからな! まあ、おがそこまで言うならサインしてやるよ。俺を好きになってくれる女なんて、世のにごまんといるんだからな!」
憲吾はわざとらしくきな声をげながら、ボールペンを乱暴に握り、署名欄に殴りきのような文字をらせた。まるで、郵便受けに投函されたなダイレクトメールをゴミ箱へ放り込むかのような、軽極まりない態度だった。
そのの午のうちに、私たちは役所の戸籍課へ向かい、婚届は滞りなく受理された。
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マンションへ戻った私は、あらかじめパッキングを済ませておいたスーツケースつとの回りの荷物をまとめ、タクシーを呼んだ。
暮らしたその部の玄関をる際、私は度としてろを振り返らなかった。
実に戻ってからヶが過ぎた。
両親は突然の戻りにも関わらず、事を静かに察して温かく迎えてくれた。私は実ので、しい賃貸マンションを探しながら、傷ついたと過労に喘いでいた体をゆっくりと休めていた。
憲吾との結婚活という悪から解き放たれ、朝のを浴びながら淹れたてのコーヒーをむ平穏な。それを取り戻しつつあった、ある曜の昼がりのことだった。
元でバイブレーションを響かせたスマートフォンに表示されたのは、登録を消していなかった元義母・かず子さんの番号だった。
そして、冒の会話へと繋がるのである。
「……毎万じゃ、正直ちょっとりなくなってきちゃったのよ。だからね、今から仕送りを万に増やしてちょうだい」
受話器の向こうから響く、あまりにも当然と言わんばかりの命令調。この母親にして、あの息子あり。私は胃の奥がたくくなるのをじながら、氷のように事務な声音で事実を告げた。
「かず子さん、変申し訳ありませんが、そのご望にお応えすることは切できません」
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「あら、どうしてよ? あなた、の課さんでお料は並み以にたくさんもらっているんでしょう? 息子の憲吾のためにも、母親の面倒を見るのは嫁として当たりの義務じゃないの」
信じられない言葉だった。私は息を吸い込み、確な最通告を叩きつけた。
「私、憲吾さんとヶに正式に婚いたしました。ですから、もうあなたに仕送りをする法な義務も、理由も、何ひとつありません」
受話器の向こうで、ヒュッと息を呑む音が聞こえた。
そして、数秒の静寂の、鼓膜を破らんばかりの切り声が炸裂した。
「り、婚ですって!? 何ですってぇぇ!? そんな事なこと、私、何も聞いてないわよ!!」
「お話は以です。今の活に本当にお困りなのでしたら、おまいの域の福祉事務所や役所にご相談なさってください。活保護の申請をご検討されてはいかがでしょうか」
それが、元嫁として私が彼女へ向けられる、最限かつ最の慈の言葉だった。しかし、その提案を聞いた瞬、話の向こうのかず子さんの空気が、狂気を帯びたものへと変した。
「せ、活保護ですってぇ!? あなた、私が誰だか分かって言っているの!? この名のに嫁いだ私が、そんな惨めな国の施しなんて受けられるわけないでしょうが!!」
「ですが、に公な支援を頼る方法がないのであれば……」
「方法がないですって!? ふざけないでよ! 憲吾が何と言おうと、度嫁に来たあんたは私の嫁なの! 嫁が姑の面倒を見るのは、本古来の当たりの義務でしょうが!!」