"青い痣と一冊の手帳" 第19話
など誰も信じる者はいなかった。 所では義母の悪評が完全に定着し、ゴミしや買い物でにても、誰も義母と目をわせず、挨拶すら避けられる完全な分状態に陥っているという。特に、と同世代の子どもを持つ親たちからは、蛇蝎の如く嫌われ、たい線を浴びせられているそうだ。
方のは、私に対する傷害容疑で略式起訴され罰刑を受けただけでなく、会社での組織な正経理と横領、さらに部に対する常なパワーハラスメントが監査によって次々とのに晒された。 懲戒解雇こそ免れたものの、役職をすべて剥奪されて平社員への格処分となり、方の閑職へと遷されることが内定したという。 退職も幅に減額され、私への慰謝料との学費の支払いに追われ、かつての傲な面など見るもない惨めな々を送っているとのことだった。
だが、そんな元夫と義母の末など、もはや今の私にはどうでもいいことだった。
の柔らかな差しが、しく借りたLDKのマンションのリビングをるく照らしていた。
婚が成してから、私の毎は劇に変化した。 会計事務所での仕事に正式に復帰した私は、以にも増して精力に業務に打ち込んでいた。のブランクを埋めるための勉は決して楽ではなかったが、自分で働き、自分の識で社会に貢献し、正当な対価を得られることのびは、何物にも代えがたいものだった。
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んでいた私の瞳に、再びききとしたが戻っていた。
そして、無事に学へと学したもまた、驚くほど協力になっていた。 代の反抗期が嘘のように、事のくを自らんで引き受けてくれるようになったのだ。特に料理に興を持ち始めたらしく、最ではもっぱら夕作りはの担当になっていた。
(それにしても……) リビングのデスクでノートパソコンをき、持ち帰った類に目を通しながら、私はキッチンにつ息子の背を眺めてさく微笑んだ。 (こんなに毎にいて、ちゃんと事ばかり伝ってくれて……学で女の子との会いとかはあるのかしら? し配になってしまうわね)
そんな母親特のお節介な配がをよぎる。だが同に、こうして何気ない常ので息子と穏やかに言葉を交わせる今のが、たまらなくおしく、ずっと続いてほしいと願ってしまう自分もいた。
ジュウジュウと、ばしい醤油とごま油の匂いがキッチンから漂ってくる。 フライパンをリズミカルに振る気よい音がリビングに響いた。
「あのさ、母さん」 フライパンを煽るを止めずに、が振り返って声をかけてきた。 「ん? 何?」 私はパソコンの画面から顔をげ、息子の顔を見つめた。今の夕飯は、が得料理だと言い張る特製チャーハンらしい。
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「とりあえず、目ののの元に集しなさいよ。焦げちゃうわよ」 私が笑いながら注すると、は「丈夫だって」と照れ笑いを浮かべ、力をめてから真面目な顔つきになった。
「俺さ……最、学で経済の勉とかしてて、つくづくったことがあるんだ」 「何をったの?」
はフライパンから皿へと黄のチャーハンを鮮やかに盛り付けながら、真っ直ぐな瞳を私に向けた。
「俺、の頃は荒れてて、母さんに酷いことばっかり言ってたけどさ。……母さんがどんなに辛い状況でも折れずに、最まで正しいことを貫き通して戦った背を見て、本当の勇気ってものが何なのかを学んだよ。俺の母親が、母さんで本当によかった」
に投げかけられた息子の真っ直ぐな言葉に、胸の奥がくなり、界がじんわりと涙で滲んだ。 「……もう。急にそんなこと言って、恥ずかしいじゃないの」 私は涙を誤魔化すようにさく笑い、そっと目元を指先で拭った。
「はい、お待たせ。美咲スペシャルチャーハン完成」 テーブルのに、湯気をてる美しそうなチャーハンがつ並べられる。 「いただきます」とをわせ、スプーンをに運ぶ。いっぱいに広がるばしさと温かさに、胸の底からい幸福が満ちていくのをじた。
失われたは戻らない。負った傷が完全に消えることもないだろう。
けれど、私には信じえる息子がいて、自分ので歩んでいく力がある。 これからも、この温かい卓を囲みながら、でを取りってを向いてきていけばいい。
「美しいわ、」 「だろ? 腕げたんだよ」
息子の屈託のない笑顔を見つめながら、私は再びからの笑顔を浮かべ、しい私たちのの第歩を噛み締めていた。