"妻の避妊薬" 第13話
話のスピーカーから漏れ聞こえてきたその断末魔のような叫び声に、歩みのがピタリと止まった。
女の歩みは、瞬だけ目を見いて戸惑ったような表を見せたが、すぐにそのたい顔に戻り、ややかな声でこう言い放った。
「ふーん……。じゃあいいよ、会ってあげても。そっちがどうしてもって言うならね」
娘のからそんな言葉がびすとは予していもせず、僕はわず目を見張った。歩みのその発言はあまりにもだった。あんなにあけみの倫と勝な裏切りを激しく憎悪し、婚は名を聞くだけで拒絶反応を示して切の話題すらにしなかったあの子が、まさか自ら「会ってもいい」と言うなんて信じられなかった。
「でもね、余命宣告とかされてってるんだか何だからないけどさ、私たちが同して泣いてくれるとかわないでよね。私のこれまでのストレスを発散させるためのサンドバッグにされても、文句は言わないでよ? あんたには、親面する権利なんて最初からどんなものもないんだからさ」
淡なトーンでそう言い放つと、歩みは方に話を切った。
話の向こうで余命宣告の話を聞いた、しは母親に対してが湧いたりが揺らいだりしたのかとったが、歩みののにはそんな易しいは微も残っていなかったようだ。
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あけみは切迫した様子で必に話をかけてきて子供たちとの面会を願したが、それに対して娘の歩みがあまりにも徹かつ静に対処している姿は、かつての母親と子供のが完全に逆転してしまっていることを如実に物語っており、烈な印象を僕に残した。
正直なところ、あんなにあけみを毛嫌いしていた歩みが、なぜ急に「元母親に会ってもいい」などと言いしたのか、その本当の目は僕には全く理解できなかった。しかし、とりあえず親子での話を旦切り、僕たちはもうの子供である弟の直に、この連の来事をきちんと話して聞かせることにしたのだった。
僕と歩みはリビングのソファへと移し、ちょうど学から帰ってきたばかりの息子・直に向かって、今の状況をありのままに伝えた。
「……えっ、何言ってるの姉ちゃん、パパ? 俺は絶対そんなの嫌だよ!」
直は聞いた瞬、顔を真っ青にして激しく首を横に振った。
「俺が昔、胸を押さえてにかけてるに、自分の楽のためにらない男と緒にいたのことなんか、許せるわけないじゃん!」
直はでも絶対に会うものかと、涙を浮かべながら断固として拒絶してきた。
「まあ……そりゃそうだよな」
僕も、息子のその反応が当然だとった。あけみは、まだ幼かった子供たちをにほっぽりして、僕が方へ単赴任している隙に倫にけ暮れていたのだ。
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そのせいで直は精神なストレスから臓発作を起こし、歩違えばもうしで命を落としかけるところまで追い詰められていたのだから、んで当然だった。
「直、おがどうしても嫌なら無理しなくていい。俺たちが病院にっているは、じいちゃんとおばあちゃんがうちに様子を見に来てくれるから、でしく待っていてくれ」
そう直に優しく告げ、最終に、今回の病院への見いは僕と女の歩みのだけでくことになったのだった。
指定された病院に到着し、案内された病の扉のにった、僕たちは揃って言葉を失い、呆れ果てるしかなかった。
実がそれなりに裕福な裕福層であるあけみは、僕たちが勝に像していたような、余命宣告を受けた末期患者がひっそりと治療を受けるような殺景な部ではなく、広々とした豪華な「特別個」で、のんびりと優雅に入院活を送っているように見えたからだ。
病のドアのにった瞬、僕と歩みは顔を見わせ、「……やっぱり、今からでも帰ろうか」と無言のアイコンタクトを交わした。しかし、ここまでわざわざを運んだのだから、言いたいことを言も言わずに引きがるのはどうしても気が済まなかった。