"妻の避妊薬" 第1話
「なんで病院を嫌がるの?」
妻のあけみが発したその言に、僕はあらかじめ用していた返答をそのままにした。
「それはさっき話したじゃない。自然に任せたいの」
「違うだろ。お、避妊薬んでるじゃないか。まだ子供を授かる期じゃないとって」
あけみは敵な笑みを浮かべ、が物顔でそう言い放つ。
「子供ができれば浮気できなくなるから、の違いだろう。いい加減にしろ」
僕はりを押し殺しながら、ややかな線を彼女に向けた。
言い争いの記憶が脳裏をかすめる。僕は基本に言いいが苦だ。言いいになるとまず自分の気分が悪くなる。攻撃なはそういういをしないのだろうか。そんな疑問を抱きつつも、には言わなきゃいけないがあると、僕は過の苦い経験を通じてった。
学を卒業に入社した会社は、社員同士の仲が良かった。それは々のモチベーションにも繋がり、おかげで朝どんよりした気分で社することがない恵まれた環境だった。
あるの昼がり、デスクで資料を理していると、同僚がさな声で僕に相談を持ちかけてきた。
「ひろし、今度の曜予定あるか?」
僕は元のペンを止め、ちらりと彼の顔を見げて答えた。
「別にないけど、どうした?」
同僚はし気まずそうな笑みを浮かべ、をポリポリとかきながら切りした。
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「買い物に付きってくんない?」
「え、めんどくさい」
反射にそう呟いたが、無に断るのもはかられたため、僕はため息をつきながら続きを促した。
「何買いにくんだ?」
「彼女の誕プレゼント。俺、誰かに押してもらわないと買えない気がするんだよ」
同僚は真剣な差しでそう頼み込んでくる。
「え、俺、そういうセンス自信ないよ。本当に慮したい」
僕は首を横に振って拒もうとしたが、同僚は諦めない。
「いいよ。隣にいて『これいいんじゃない?』って言ってくれるだけでいいんだからさ」
「なんだよそれ。まあ、いいけどさ」
渋々承諾したことで、こうして僕は、見たこともない同僚の彼女のプレゼント選びに同することになったのだ。
同僚に連れてかれたのは、の角にあるなかなか級なブランドのだった。内には洗練されたバッグやアクセサリーが綺麗に並べられており、庶民な活を送る僕にとって全く縁のない空だった。を踏み入れた瞬から、僕は居の悪さに体をこわばらせていた。
「これどうかな?」
同僚はの雰囲気に気圧されることもなく、ショーケースに並ぶ品々に目を凝らし、品選びに没していた。
「え、これ、万円もすんの?」
値札を見た僕はわず声をひそめて驚愕する。
「うん。で、どうかな?」
同僚は真剣な表で僕の見を求めてきた。
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ので、僕はこうぼやいていた。『ここであれを言えばいいのか? まだいのか?』
や汗をかきながら、僕は適当にごまかすように答えた。
「えっと、いいんじゃない?」
「本当にそうってる?」
「え、俺、わかんないよ。だから俺じゃ役にたないってってたんだよ」
のでそう愚痴をこぼしながら、僕は周囲をキョロキョロと見回した。すると、しれた所で別の品定めをしている女性組が界に入った。
そのうちのの女性が、じっとこちらを凝している。
「……ひろしじゃない?」
に掛けられたその声に、僕は聞き覚えのある響きをじ取り、そちらに線を向けた。
「なつみじゃん。久しぶり、以来だな」
そこにっていたのは、かつての同級であるなつみだった。彼女は驚きと懐かしさが入り混じった表で僕を見つめている。
「何、彼女へのプレゼント選んでんの?」
なつみはからかうような笑みを浮かべて尋ねてきた。
僕は慌ててを横に振って否定した。
「俺じゃないよ。こいつの彼女のプレゼントなんだよ」
同僚が慌ててペコリとをげるのを見て、なつみはクスリと笑った。
「どれどれ、ちょっと見せてよ」
なつみとその友は興津々な様子でづいてくると、のをくっつけうようにしてショーケースのガラスを覗き込んだ。
「この値段の予算なら、こっちのものもいいよ。こっちの方が今気のデザインだし、絶対ばれるって」