みかん小説
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"「和裁しかできない」嫁と20億円の着物" 第12話

の午で若い弟子たちが針をかしている。

はその様子を静かに見守っていた。

1の弟子が困った顔で尋ねてくる。

「先、この襟の縫い方が難しくて……」

は優しく微笑んでづいた。

「ゆっくりでいいのよ。焦らないで」

かつて枝が自分にかけてくれた言葉である。

今度はが、その言葉を次の世代へ伝えている。

は弟子のを取って丁寧に指導した。

針の角度、糸の引き加減。

全てを1つ1つ教えていく。

窓のでは桜のびらがっていた。

を優しく照らしている。

夕方になり、弟子たちが帰ってった。

は1の片付けをする。

針箱を閉じて、部を見回した。

この所には枝のが溢れている。

畳の匂い、古い触り。

全てが懐かしいものだった。

は奥の部へ向かう。

そこには桐の箱が切に保管されていた。

箱をけると、若の着物がある。

あの、襟の裏から株券が落ちてきた着物だ。

は着物を優しく撫でた。

絹の触りが今も変わらず滑らかである。

が経ってもその美しさは褪せていない。

目を閉じると、枝の姿が浮かんでくる。

あの優しい笑顔。

厳しくも温かい差し。

に握ってくれたたい

全てが昨のことのようにされた。

の目から静かに涙が流れ落ちる。

とはいえ、それはしみの涙ではない。

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謝とが込められた涙だった。

さくつぶやく。

「お母さん」

は着物を見つめる。

「あなたの贈り物は、私のそのものを変えました」

着物を胸に抱いて、は静かに微笑んだ。

枝は最に本当に切なものを教えてくれたのだ。

の価値はおや学歴で測れるものではない。

本当の豊かさは、誰かのために尽くせるにある。

そしては形を変えて、永に受け継がれていく。

窓のでは夕が沈んでいく。

川越の町がオレンジに染まっていた。

古い建物がを落としている。

は着物を丁寧に畳んだ。

そして桐の箱へ戻す。

その作はとても丁寧で、に満ちていた。

玄関で達也の声が聞こえた。

「ただいま」

は涙を拭いてがる。

「お帰りなさい」

達也がへ入ってきた。

には買い物袋をげている。

達也が嬉しそうに言った。

「今はおの好きな魚買ったぞ」

は微笑む。

「じゃあ今夜は、それで煮付けを作りますね」

2は並んで台所へ向かう。

の支度を緒にするのが課になっていた。

窓のでは灯がつずつ灯り始めている。

静かな夜が川越の町を包んでいった。

卓には温かい料理が並ぶ。

魚の煮付け、噌汁。

それに鉢がいくつか。

と達也は向かいって座った。

2の声が静かになる。

「いただきます」

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事をしながら、達也が話しかけた。

「今学で、面い講義があってな」

は箸を置く。

「どんな?」

2の会話は穏やかに続いていく。

笑い声が折響いた。

は縁側に座った。

達也も隣に腰をろす。

2で夜空を見げた。

がいくつも輝いている。

の夜はまだたいが吹いていた。

達也がぽつりと言う。

「幸せだな」

も静かに頷いた。

「はい」

枝が願っていた族の形である。

お互いをいやり、支えい、共に成していく。

それが今ここにあった。

は達也のを握る。

温かいだった。

2かりので寄り添っている。

その姿はとても穏やかで、幸せそうに見えた。

くからの音が聞こえてくる。

川越の町は静かに眠り始めていた。

で、枝の声が聞こえたような気がした。

『よく頑張ったね、ちゃん』

その声は優しく、温かいものだった。

は空を見げる。

が1つきく輝いていた。

まるで枝が見守ってくれているようだ。

でそっとつぶやいた。

「ありがとうございます、お母さん」

い旅である。

そのには苦しみもしみもある。

だが、本当に切なとの会いが全てを変えてくれるのだ。

はその真実ををもってった。

そしてこれからも、その教えを胸にきていくだろう。

の着物は今もの奥で静かに眠っている。

その襟には枝のいが込められていた。

形を変えても消えることのない、永の絆である。

の夜が優しく2を包んでいく。

川越の町にしい朝がやってくるだろう。

そこには希望と温かいが待っているのだ。

と達也はを繋いだまま、静かにを見げ続けた。

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