"3回洗う夫と6年潜伏の財閥令嬢" 第15話
自分がもはや誰からも相にされていない。
ただの滑稽なピエロに成りがったという現実。
私のややかな差しは言葉よりも鋭く彼の精神をえぐっていた。
「見苦しいぞ、健」
権田警部が酷な声で言い放ち、で暴れる健を見ろした。
「おがいくら喚こうが、もはやおを守るは1もいない」
警部は静を顎で指した。
「おが掃除の顧客だと豪語していた財界の連も、現斉に内偵調査がんでいる。おはただの汚い連続殺犯として、の当たらない檻ので過ごすことになるんだ」
「嘘だ!嘘だぁぁ!」
絶望のどん底で鳴をげる健。
権田警部はそんな彼をたくあしらい、静に向き直った。
「静、話の続きを聞こうか」
権田警部は目を細める。
「6、おが代わりとして呂に寝かせ、この男に殺させた被害者とは体どこの誰だ?」
玄関の空気がピンと張り詰めた。
鳥会も、ゆかりも、そして私も、固唾を呑んで静の次の言葉を待った。
静はにいつくばる息子を、ひどくれむような、そして怯え切った目で見つめた。
ポツリと、そのな物の名をにした。
「健……あなたが6、暗ので首を絞めて殺したあの女は……あなたの会社の部だった……」
静は目を閉じた。
「リナ……リナさんよ」
「……はあ?」
健のきがピタリと止まった。
広告
その名を聞いた瞬、健の顔から切のが抜け落ち、まるで蝋形のような顔になった。
「リナ……?何を言ってるんだ?母さん」
彼は首を振る。
「リナは俺のだったんだぞ?俺が本当にからしていた、ただ1の女だ」
健は必に否定する。
「リナは6……俺の貯を盗んでの男と駆け落ちして姿を消したはずじゃ……」
「違うのよ……」
静はボロボロと涙をこぼしながら、恐るべき真実を語り始めた。
「あの子、あなたが『邪魔な妻を殺す』って言いしたのをって、警察にこうとしたのよ」
彼女は嗚咽を漏らす。
「だから私が、ろから瓶でを殴って気絶させたの。そして織のパジャマを着せて、暗い呂に寝かせておいたのよ……」
「嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ!」
健は信じられないものを聞かされたように首を激しく横に振った。
「俺は……俺は自分が番していた女を、こので殺して……3かけて溶かしたっていうのか……!?」
「それだけじゃないわ」
静はさらに健の精神を完全に破壊する衝撃の事実を突きつけた。
「あの……リナさんのお腹のには……あなたの子供がいたのよ……」
「お腹のに……俺の子供が……?」
玄関のたいタイルのにいつくばったまま、健の全からガタガタと激しい震えが始まった。
彼のからヒューヒューという喉が詰まったような気な音が漏れす。
広告
していた女。
そして自分の血を分けたが子。
自分自のでその首を絞め、あろうことか暗くたい呂で3もかけてドロドロの肉片へと変えてしまったのだ。
「あ、あぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
突然、健は獣のように絶叫し、そので激しく嘔吐した。
胃液を撒き散らしながら、彼は自分の顔を両で狂ったように掻き毟る。
完璧にセットされていた髪は鳥の巣のように乱れ、級スーツは汚物にまみれた。
「だからか……だから俺は毎朝、あの呂を3回も掃除しなきゃならなかったんだ!」
健は焦点の定まらない目で宙を睨みつけ、うわごとのように叫び始めた。
「どんなにい洗剤を使っても!どれだけ薬品を流し込んでも!排溝の奥から赤ん坊の鳴き声が聞こえてくるような気がしたんだよ!」
彼はを叩く。
「タイルの隙にリナの血がこびりついてれない気がして!俺はずっと覚と戦いながらこのを浄化し続けてきたのに!」
狂気に満ちた告に、屈な捜査員たちでさえ眉をひそめ、嫌悪をあらわにした。
健の異常なまでの呂掃除。
それは潔癖症などではない。
彼自の潜識にこびりついた、するものをにかけてしまったという消えない罪悪と恐怖。
それを物理に洗い流そうとする狂気の儀式だったのだ。
現実を直できず、完全に精神の均衡を崩した健は、血った両目をギロリと私の方へ向けた。
そして全ての責任を私に押し付けるように、再び悪辣な言葉の刃を振り回し始めたのだ。