"3回洗う夫と6年潜伏の財閥令嬢" 第2話
潔癖症なのは昔からだが、いくら何でもやりすぎではないか。
それに、彼が使っているあの薬品ボトルのラベルは剥がされている。
何が入っているのか、私には分からない。
以、私が触ろうとしたのことだ。
彼は激しい剣幕で私を鳴り散らした。
健はコーヒーカップを置き、ふといしたように顔をげた。
「まあいい」
彼は私に線を向ける。
「今は午から、おの友達が来るんだったな」
私は頷き、彼の顔を見た。
「ゆかりが久しぶりに遊びに来るの」
私はし声を弾ませる。
「学代からの親友で、今は法医学者をしてる」
健はそうに顔をしかめた。
「ふん」
彼はで笑う。
「体ばかり見てる女か。趣が悪いな」
健はちがり、スーツのジャケットを羽織った。
「変な菌をに持ち込まないように、しっかりを洗わせろよ」
健はそれだけ言い捨てた。
彼は残りのコーヒーをみ干す。
そしてに玄関へ向かい、会社へと掛けていった。
バタンとドアが閉まる音が響く。
私は1、静まり返ったリビングでいため息をついた。
夫の言う通り、私には取り柄がないのかもしれない。
けれど、この結婚活はどこかおかしい。
そんな漠然としたが、胸の奥で黒いシミのように広がり始めていた。
午になり、インターホンの音が鳴った。
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私は玄関のドアをける。
そこには親友のゆかりがっていた。
ショートカットで活な彼女は、学代からずっと私の相談に乗ってくれる頼もしいだ。
ゆかりは笑顔で私にを振った。
「美咲、久しぶり」
彼女は私の顔を覗き込む。
「元気にしてた?」
私は嬉しくなって彼女を招き入れた。
「ゆかり、いらっしゃい」
私はリビングを指し示す。
「がってがって」
再会をびい、私たちはリビングでお茶をんだ。
況を語りうは、私にとってらぐものだった。
ゆかりは相変わらずエネルギッシュだ。
彼女は学病院でのハードな常を、面おかしく話してくれた。
ふと、ゆかりはケーキを頬張りながら、鋭い線を私に向けてきた。
「それにしても美咲」
彼女は配そうに私の顔を見つめる。
「あんた、ちょっと痩せた?」
ゆかりは首を傾げた。
「顔もあまり良くないわよ」
私は曖昧に微笑み、線を逸らした。
「ええ、そうかな」
私はためらいながらをく。
「ちょっと最疲れ気で」
私はマグカップを両で包み込んだ。
「健さんとうまくいってないの」
法医学者という職業柄か、彼女の観察は鋭い。
私はためらいながらも、夫の最のたい態度について話し始めた。
異常とも言える毎朝の呂掃除についても、ぽつりぽつりと打ちけた。
「毎朝、3回も掃除するの」
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私は彼女の顔を見つめる。
「しかも、ラベルのない薬品を使って……」
ゆかりの表が、見る見るうちに真剣なものへと変わっていく。
私はな気持ちを隠せずに彼女を見た。
「本は運気をげるためだって言うんだけど」
私は声をひそめる。
「正直し怖くて」
ゆかりは真顔になり、スッとちがった。
「ちょっとお洗い借りていい?」
彼女は廊の方へ線を向ける。
「ついでにを洗いたいから、お呂の方の洗面所を使わせてもらうわね」
そう言うと、ゆかりは洗面所へと向かっていった。
私はリビングで、彼女が戻ってくるのを待っていた。
洗面所からは、のジャーという音が聞こえてくる。
だが、なかなかゆかりは戻ってこなかった。
2分、3分とが過ぎていく。
私はし議にい、廊に向かって声をかけた。
「ゆかり、タオルそこにかかってるわよ」
返事がない。
審にった私が、洗面所の方へ向かおうとちがった。
そのだった。
乱暴に洗面所のドアがき、ゆかりがびしてきた。
私は驚いて彼女の顔を見る。
その顔は血の気が完全に引き、真っ青だった。
彼女は息を荒くし、目を見いて私に詰め寄った。
ゆかりは両で私の腕をガシッと掴む。
私は戸惑いながら彼女を見つめた。
「ゆかり、どうしたの?」
私は彼女の腕に触れる。
「そんなに慌てて……」
彼女の体は刻みに震えていた。
数えきれないほどのと向きってきたはずの法医学者が、恐怖に怯えている。