"妻を殴った外交官と2億円の空売り" 第22話
傷が完全に消えたわけでもない。
それでも、自分が何を望み、何を拒むかをはっきりとっている。
自分の仕事をし、族と正面から向きい、必ならでしい国へける。
美咲は役所をると、ののでく息を吸った。
、成田空港でじた自由は、たく鋭いものだった。
今の自由は、もっと穏やかで温かかった。
誰かから逃げるためではない。
自分のきたい所へ歩くための、本物の自由。
その頃、直は古い官舎をて、さな賃貸マンションへ移っていた。
荷物を理していると、オレンジの袋が押し入れの奥からてきた。
美咲へ渡すつもりだったバッグは、度もけられていない。
直は袋をしばらく見つめた、リサイクルショップへ持っていった。
査定を待つ、員が議そうに聞いた。
「贈り物ですか?」
直は静かに答えた。
「そのつもりでした」
員はバッグを見た。
「使われなかったんですね」
直は頷いた。
「はい」
直は自分に言い聞かせるように呟いた。
「で済ませようとしたから」
員はが分からない顔をしたが、直はそれ以何も説しなかった。
売却したは、精の元従業員を支援する基へ、匿名で全額寄付した。
それで罪が消えるとは、全くっていない。
償いは、相に許してもらうためにするものではない。
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自分が度と同じことをしないために、静かに続けるものだとようやくったのだ。
美咲は、ワシントンへ戻るを迎えた。
空港の搭乗で、母からメッセージが届いた。
『着いたら連絡してね。無理しすぎないで』
父からは『次はこっちから会いにく』。
優馬からは『姉ちゃんの論文、学の先が引用してた』と送られてきた。
からもメッセージが届いた。
『美術館楽しかったです。また仕事の話をしましょう』
美咲は、つずつ丁寧に返信した。
搭乗案内が始まるアナウンスが響いた。
彼女はパスポートと搭乗券をに持ち、ちがった。
と同じ、へ向かう便。
だが、あのの彼女は、終わった結婚から逃げるだった。
今の彼女は、自分の仕事と未来へ向かって戻るだった。
窓の向こうで、の翼が太陽のを受けて輝いていた。
美咲は、のでさく言った。
「ただいま」
誰かのにではない。
自分自のに。
ワシントンへ戻って半、美咲は部内のプロジェクトリーダーに任命された。
数でのさな祝賀会で、司がグラスを掲げて言った。
「は、数字の向こうにいるを決して忘れない」
司は美咲を見た。
「それが、この仕事で最もな資質だ」
美咲はグラスを持ちながら、胸の奥が温かくなるのをじた。
以の彼女は、評価されるとどこか怖かった。
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へ帰れば、直に『でしゃばるな』と言われる気がして、びをさく畳んでいた。
今は、嬉しいにから嬉しいと言える。
との関係も、ゆっくりと続いていた。
で美術館へき、仕事帰りに事をし、見が違えば徹底に議論した。
は、美咲を救おうとはしなかった。
過を忘れさせるとも、決して言わなかった。
ある夜、が真剣な顔で聞いた。
「私とのことで、何かを諦める必がまれたら言ってください」
は美咲の目を見た。
「で方法を探したい」
美咲はすぐには返事をせず、その言葉をので確かめた。
直は『俺についてくればいい』と言った。
は『で方法を探す』と言った。
その違いはさく見えて、をするほどきかった。
美咲は微笑んで答えた。
「私も同じことを約束します」
が恋と呼べる関係になったのは、それからさらに数ヶだった。
急がなかったからこそ、美咲は自分ので確かな歩を踏みせたのだ。
直のことをいすは、今でもある。
痛みが完全に消えたからへめたのではない。
痛みがあっても、そのを自分のために使えるようになったのだ。
美咲は仕事机の引きしに、婚成の通を今も保管している。
もう頻繁に見ることはない。
代わりに、机のには族の写真、研究チームの集写真、と訪れた美術館のチケットが置かれている。