"妻を殴った外交官と2億円の空売り" 第19話
昼休み、亜美と裕子がさなケーキを買ってやってきた。
「自由記!」
亜美が冗談めかして笑いながら言った。
「婚を祝うのは変かもしれないけど、あなたが自分の名を取り戻したは、祝っていいでしょう」
美咲は嬉しそうに笑った。
「ありがとう」
裕子に聞かれた。
「今、どんな気持ち?」
美咲はし考えた。
「しくないと言えば、嘘になるわ」
美咲はコーヒーカップを見つめた。
「、千以、私はあのでちゃんとそうとした」
美咲は顔をげた。
「全部が無だったとは、いたくない」
亜美が優しく言った。
「無じゃないよ」
美咲は頷いた。
「うん。自分の境界線をった」
美咲は友たちを見た。
「優しさとは違う。相を支えることと、自分を消すことも違う」
美咲は静かに笑った。
「そこまで分かるのに、かかった」
美咲は窓のを見た。
ポトマック川の向こうに、夕方の美しいが広がっている。
「れるのに必だったのは、勇気より準備だった」
美咲は振り返った。
「仕事を取り戻し、証拠を理し、族を守る方法を考えた」
美咲は言葉を続けた。
「だけでびしていたら、直たちはまた私が戻るとったはず」
亜美が呆れた顔をした。
「実際、っていたみたいね。座のバッグを買って帰ったんでしょ?」
美咲は苦笑した。
「うん」
は同にため息をつき、やがて声をげて笑った。
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美咲の仕事は忙しかった。
国際資本移の監モデルを改良し、アジアの堅企業が投資に狙われる仕組みを詳細に分析した。
彼女の研究は、特定の企業を罰するためではない。
同じ被害を受ける会社を、つでも減らすためのものだった。
精も、その恩恵を受けた。
本の監督当局が取引を再検証し、正な報利用があった能性を公表すると、精への信用は急速に回復した。
失われた欧州企業との提携も、別の形で無事に再された。
ある夜、父から話が来た。
「美咲、ずっとおに申し訳ないとっていた」
父は声を震わせた。
「どうして会社を守るために、佐伯との縁談を受け入れたんだ」
父は悔をにした。
「おが直さんを好きだと言ったから、これでいいと自分に言い聞かせた」
父は涙声になった。
「でも本当は、の事をおにしわ寄せしたんだ」
美咲はく黙った、優しく答えた。
「お父さん」
美咲ははっきりと言った。
「結婚を決めたのは私よ」
「直を信じたかった。それは私の選択だった」
美咲は言葉を区切った。
「それでも、守るべきだった。これから守って」
美咲は力く言った。
「会社で働いているたちを、そしてお母さんを」
父は話の向こうで、声をげて泣いた。
美咲も初めて、しだけ泣いた。
それは直への未練の涙ではなかった。
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結婚によってざかっていた族と、もう度く繋がるための涙だった。
が過ぎた。
美咲は国際会議のため、京へ張した。
成田空港へりつと、の夜の記憶が蘇った。
さなスーツケースつで国した、彼女は先のことを何も保証されていなかった。
今は、会議資料と職員証を持ち、自分の仕事として堂々と帰ってきたのだ。
会議の初、ホテルのロビーで直を見かけた。
彼は以よりし痩せ、髪にいものが混じっていた。
務省はすでに退職し、関連する捜査と民事訴訟の対応を続けながら、さな研究関で事務の仕事をしていると聞いていた。
の線がった。
直はゆっくりとづいてきたが、以のように名を呼ばなかった。
「さん」
直はをげた。
「元気そうだ」
美咲は静かに頷いた。
「ええ」
直は美咲の目を見た。
「報告、読んだ」
直はしだけ微笑んだ。
「精だけじゃなく、同じように狙われる企業のための内容だった」
美咲は事務に答えた。
「仕事だから」
直は頷き、しばらく言葉を探した。
「謝って済むことじゃない」
直は美咲を真っ直ぐに見つめた。
「でも、あのあなたを殴ったことも、あなたをさく扱ったことも、全部俺の責任だ」
美咲は静かに聞いた。
「わかったわ」
直はためらいがちに聞いた。
「許してくれるのか?」
美咲は即答した。
「いいえ」
直の顔が、わずかに張った。