"妻を殴った外交官と2億円の空売り" 第12話
佐伯グループの取締役会では、役員たちの声が次第に荒くなっていった。
「なぜこれほど同に照会が来る?」
役員のが机を叩いた。
「の規制当局が、共通のデータを見ているとしかえません」
「報源はどこだ?」
直の父である会は、い机の端を指でイライラと叩いた。
直は務省の職員であり、会社の経営陣ではない。
しかし、経済交や国際融規制に詳しいという理由で、非公式の助言者として会議に呼ばれていた。
財務担当役員がをいた。
「国際関の報告がくるという話があります」
役員は元の資料を見た。
「テーマは、ファミリーオフィスを利用したオフショアレバレッジと操作」
役員は周囲を見回した。
「まだドラフト段階ですが、本企業の事例が含まれる能性があるとのことです」
直の胸がざわついた。
役員が言葉を続けた。
「執者は複数名です。ただ、主分析者のが……美咲だと」
会議が、を打ったように静まり返った。
子から美咲の経歴を聞いていた会は、顔をきくしかめた。
「直、妻は何をっている?」
直はうつむいたまま答えた。
「分かりません」
会は鳴った。
「夫婦だろう!」
直は顔をげた。
「現、れて暮らしています」
会は目を丸くした。
「れている?おがに別の女を入れて妻を殴ったという噂は、本当か?」
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直は返事をしなかった。
それだけで分な答えだった。
会は机をく叩きつけた。
「愚か者が!庭を壊すだけなら勝にしろ」
会は直を睨みつけた。
「だが、の問題を国際関へ持ち込まれる隙を作るな!」
直は唇をく噛み締めた。
美咲が、報告で自分たちを図に狙っている。
最初は直もそうった。
しかし、公されたドラフトを読むと、個名も企業名も直接は切かれていなかった。
規制の抜け穴、複雑な資構造、報の非対称性、政府関係者とファミリーオフィスの利益相反。
どれも徹底して般論として記述されているにも関わらず、融関は佐伯グループをく警戒した。
なぜなら、報告に示された典型例の数字と構造が、佐伯の取引にあまりにもよく似ていたからだ。
美咲は、個な復讐の言葉をもいていない。
事実と制度の欠陥だけを論理に並べ、読む者に自然と結論をさせた。
それが、言い逃れのできない最もい攻撃だった。
数、直は務省の監察担当から呼びされた。
会議には監察官、事課、法務担当が険しい顔で座っていた。
監察官がをいた。
「佐伯さん、あなたの親族が運用するファンドと、あなたが担当した経済案件とのに、な利益相反の疑いがある」
直は静を装った。
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「私はグループの経営に関与していません。正式な役職もない」
監察官は元の記録を見た。
「しかし、複数の会議に席し、助言をっていた記録が残っている」
「族から般な見を求められただけです」
監察官は鋭い線を向けた。
「、精がめていた欧州企業との提携交渉について、あなたは省内の報告にアクセスしている」
監察官は証拠のを掲げた。
「その、佐伯の関連ファンドが、精株の空売りを斉に始した」
直の呼吸が止まりそうになった。
監察官は言葉を続けた。
「偶然だと説しますか?」
直は声を絞りした。
「私は密報を渡していません」
監察官は机のに枚のを置いた。
「では、この署名は何ですか?」
机のに置かれたのは、『TKプロジェクト』の計画のコピーだった。
そこには、見覚えのある自分の署名がはっきりと残されていた。
直は何も言えなかった。
美咲が、これを持っていたのだ。
からずっと。
そのの夜、直は官舎へは戻らず、実の斎で彩佳と向きった。
彩佳は、まだ佐伯に居座っていた。
美咲が消えた、自然に寝を使い始め、子も何も言わなかったのだ。
直はたく言った。
「彩佳、しばらく別の所へ移ってくれ」
彩佳は満そうに顔を歪めた。
「どうして?」
直はため息をついた。
「省内で調査が始まった。族以のがいると、説が面倒だ」
彩佳は声を荒らげた。