"妻を殴った外交官と2億円の空売り" 第11話
それでも、すぐにはかなかった。
だけで告発すれば、もスキャンダルに巻き込まれる。
父の会社を守り、自分自の信用を守りながら、法に問題を表へす必があった。
だから美咲は、自分の力を取り戻したのだ。
研究者としての位、国際な専性、証拠を客観に評価できる弁護士と会計士。
個の復讐ではなく、制度の問題として提示できる。
美咲は届いた資料のファイルを閉じ、窓のを見た。
ワシントンの夕暮れは、京よりも空が広くじられた。
彼女は、直を破滅させたいわけではない。
ただ、彼が当に奪ったものを、元の所へ戻したいだけだ。
の信用、自分の名、そして誰にも支配されない自分自の。
そのために必なことを、彼女はこれからつずつうつもりだった。
美咲は証拠を集める方で、弁護士から何度もを押されていた。
「個なみと受け取られるは、絶対に避けてください」
弁護士は画面越しに真剣な顔をした。
「あなたが扱う研究と、婚事件の主張は、確に分ける必があります」
美咲はく頷いた。
「分かっています」
報告に佐伯を名指ししない。
未公資料を職務へ決して持ち込まない。
本の当局へ提する資料は、適法に取得したものだけにする。
美咲はすべての助言に従った。
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裁判で勝つことよりも、自分自の信用を守ることの方がだった。
佐伯と同じ卑劣な段を使えば、をれたがなくなる。
彼女は父にも、調査が本格にくまで詳しいことを言わなかった。
美咲は国際話をかけた。
「お父さん、の取引資料、廃棄せずに残してある?」
父はし驚いたように答えた。
「ある。なぜだ?」
美咲は静に伝えた。
「監督当局から確認が来るかもしれない。そのは隠さず全部して」
父は沈黙した、く聞いた。
「佐伯が関わっていたのか」
「能性がい」
「直君もか?」
美咲はすぐには答えられなかった。
「証拠の判断は当局に任せるわ」
父はく、い息を吐いた。
「おは、それをっていても緒にいたのか」
美咲は唇を噛んだ。
「信じたかったの。私が見たものより、結婚したを」
美咲は言葉を区切った。
「すまなかった」
父が声を震わせた。
「今は謝らないで。会社のたちを守って」
話を切った、美咲は机に額をつけた。
くあろうとするほど、い部分はきを失う。
職では静にデータを読み、弁護士には事実だけを話し、族にはするよう伝えた。
けれど、夜になると直が昔見せた器用な優しさが蘇った。
流産した病で、震えるをく握ってくれたこと。
初めての赴任候補に選ばれた、緒にこうと笑って言ったこと。
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美咲が作った朝を、無言でも残さず綺麗にべていたこと。
は、完全な悪をしたわけではない。
優しい瞬があったからこそ、残酷な瞬を耐えてしまうのだ。
その矛盾を正面から認めることも、婚には必なプロセスだった。
亜美は、美咲が涙を流すのを止めなかった。
亜美は美咲の背を撫でた。
「まだ好きだった自分を、恥ずかしいとわなくていいよ」
亜美は優しい声で言った。
「でも、あんなことをしたなのに好きだったことと、もう戻らないことは、ちゃんと両する」
亜美は美咲の目を見た。
「は、判決じゃないから」
美咲は、その言葉を何度もので繰り返した。
直へのが完全に消えるを待っていたら、永にけなかったかもしれない。
が残っていても、自分を守る選択はできるのだ。
それをった、美咲は初めて、本当ので佐伯かられ始めた。
名・佐伯の崩壊は、から静かに始まった。
まず、佐伯フィナンシャルホールディングスが組成したアジア向け債券ファンドについて、シンガポールの融関が追加の資料を求めてきた。
次に、ロンドンの提携が規の審査を突然止した。
ケイマン諸島に設された複数の特別目会社について、実質支配者と取引目をらかにするよう、厳しい求が届いた。
つつは、融業界では珍しいことではない。
だが、同じ週になると、全くが変わる。