"妻を殴った外交官と2億円の空売り" 第5話
直は階へ戻った。
ダイニングテーブルには、彩佳が卓をえていた。
肉じゃが、ほうれんの胡麻え、噌汁、焼き魚。
庭な料理が綺麗に並んでいる。
彩佳が子を引いた。
「座ってください。温かいうちに」
直は無言で箸を取ったが、はよく分からなかった。
彩佳が期待を込めた目で聞いた。
「美しいですか?」
直はく答えた。
「ああ」
彩佳は嬉しそうに微笑んだ。
「だったら、これから毎作ります」
彩佳は頬を赤らめ、恥ずかしそうに目を伏せた。
直は何も返事をしなかった。
、彩佳がテーブルのに落ちていたものを拾いげた。
「これ、美咲さんのですよね」
彩佳はさな属の輪を差しした。
直はそれを受け取り、内側の刻印を確認した。
『N&M Forever』
直自がデザイナーに頼んで彫らせた文字だった。
美咲が、指輪をして置いていった。
その事実は、空になったクローゼットを見たよりもく、直を揺させた。
彩佳がそうに直を覗き込んだ。
「本当に婚するつもりなのかな?」
彩佳の配そうな声の奥には、隠しきれない期待のが滲んでいた。
直はちがり、美咲の弟である優馬へ話をかけた。
数回のコールの、優馬がた。
「姉さん?連絡ないですけど、何かあったんですか?」
直は平静を装った。
「いや、何でもない」
次に、直は美咲の親友である彩乃の番号を探し、発信した。
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「美咲はそっちにいるか?」
話越しに、彩乃は乾いた笑い声を漏らした。
「奥さんをなくした交官気取りから、私に捜索依頼?」
彩乃の声はえ切っていた。
「居所を聞いている」
直は苛ちを込めて言った。
「らないわ」
彩乃は即答した。
「それより、つ聞いていい?」
「なんだ?」
彩乃は静かに問い詰めた。
「殴った、どんな気持ちだった?」
直は瞬、言葉を失った。
「もうっているのか?」
「昨あなたのにいたが、全員のい方だとっていたの?」
彩乃は嘲笑した。
「務省のが妻を殴ったなんて、表汰になれば困るでしょうね」
直は慌てて弁解した。
「俺は、彩佳が突きばされそうになったから……」
彩乃は直の言葉を遮った。
「、私は美咲をっている」
彩乃の声にりが混じった。
「あの子は絶対ににをげない。あなたがあの子の言葉を聞くにをげたことくらい、顔を見れば分かる」
彩乃の声は、再び静けさを取り戻した。
「直さん、その発であなたが失ったのは、嫌のいい妻じゃない」
彩乃は言い切った。
「あなたを信じようとしていた、最のよ」
話が方に切られた。
直はスマートフォンをソファに投げ捨て、両でを抱えた。
彩佳が、切った果物の皿を持ってづいてきた。
「警察に相談した方がいいんじゃないですか?」
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彩佳は配そうな顔を作った。
「美咲さん、何かあったら……」
直は遮った。
「必ない」
直は苛ちを隠さなかった。
警察へ何と言うつもりだ。
妻を殴った翌朝、妻が消えたと訴えるのか。
省内にられれば、経済局のポストを狙っている直にとって、致命傷になりかねない。
それに、美咲はだ。
持ちの預もあるはずだから、数で必ず戻る。
曜、直は通常通り霞が関へ勤した。
会議、各国使館との調、国会答弁資料の確認。
彼の予定は、分刻みでびっしりと埋まっていた。
それでも、直は休憩の度にスマートフォンを取りし、画面を確認した。
連絡は、切なかった。
曜も、曜も、着信はなかった。
曜の夜、直は位置報共のアプリをいた。
夫婦で張の全確認のために、互いの端末に設定したものだった。
美咲の端末は『オフライン』と表示されている。
最に記録された位置は、の『成田空港第ターミナル』だった。
空港。
直は初めて、背にたい汗が流れるのをじた。
母である子へ連絡するに、直は美咲の実へ話をかけた。
美咲の母がた。
「美咲さん、そちらに帰っていますか?」
「いいえ」
母は議そうに答えた。
「あなたと来、お父さんの誕に来ると言っていたけれど。喧嘩でもしたの?」
直は声をえた。
「いえ、仕事が忙しくて連絡がつかないだけです」
話を切り、直は執務の窓際にった。