"元警察官の父が娘に渡した一枚の封筒" 第11話
私は引きしを閉めた。
「同に、自分で帰らないって決めたのこともいすから」
誠はしだけ笑った。
夕は所の定でべた。
帰り、父と駅まで歩いた。
改札ので誠が言った。
「何かあったら話しろ」
「何もなくても話するよ」
「用もないのにするな」
「寂しいくせに」
「帰るぞ」
背を向けて改札へ入っていく父を見ながら、私は笑った。
以の私なら、父を頼ることはさだとっていた。
今は違う。
頼れる所があることと、自分でつことは矛盾しない。
どちらも持っていていいのだ。
さらにが過ぎた。
ある曜。
私は久しぶりに父ので昼をべていた。
「会社はどうだ」
「忙しい。でもより楽しいよ」
私は部署を異し、しい仕事を任されていた。
以なら失敗するたび、「私がちゃんとしていないから」と必以に自分を責めていた。
今は、失敗したら直せばいいとえる。
父が蔵庫から漬物をしている、私は茶箪笥のに置かれた郵便物を何となく眺めていた。
そのに、茶い封筒があった。
瞬だけ胸がねた。
「何見てる」
「何でもない」
私は笑った。
あの。
父から枚の封筒を渡された、私はあのが拓也の秘密を暴くものだとった。
元警察官だった父が脈を使い、夫の会社や過を調べ、私のらない決定な証拠を見つけたのだと。
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でも違った。
父が見つけたのは拓也の秘密ではなかった。
私が自分で消していた、私自のかだった。
誰かに殴られたと証されなければ苦しいと言ってはいけないとっていた。
もっとひどいがいる。
優しいもある。
謝ってくれる。
私にも悪いところがある。
そんな言葉をつずつね、自分の覚を信用できなくなっていた。
父はその言い訳を奪わなかった。
ただ、消したはずの点を拾って枚ののに並べた。
そして線になった現実を、私自に見せた。
「織」
「何?」
「ぼうっとしてないで皿せ」
「はいはい」
台所へち、器棚をけた。
以と何も変わらない実。
古い柱計。
し傷のついた卓。
湯気のつ噌汁。
そのつつを見ながら、私はう。
父は私を救ってくれたのではない。
私が自分で歩いて帰れる所を、消さずに残してくれていたのだ。
あの、拓也の会社の所だけを聞いた父は、本当はすぐにでもりしたかった。
けれど、自分のりで私のを決めないために踏みとどまった。
かに渡された封筒も、答えではなかった。
最に決めたのは私だった。
帰らない。
怖かったと認める。
もうしたことないとは言わない。
そのさな決断を積みねた先に、今の私はいる。
卓へ戻ると、誠が何も言わず私の湯呑みにお茶を注いだ。
私はそれを両で包んだ。
「お父さん」
「何だ」
「ありがとう」
誠は眉をひそめた。
「急に気持ち悪いな」
私は吹きした。
父もほんのしだけ笑った。
窓のでは、を越した庭の梅にさな蕾がついていた。
咲くにはまだしい。
それでも私はっている。
何かが始まるは、いつもきな音がするわけではない。
たった枚の。
たった晩、帰らないと決めたこと。
たった度、自分の気持ちを「したことない」と消さなかったこと。
を取り戻す最初の歩は、そんなさなところから始まることもある。
私は温かいお茶をんだ。
もう誰の音にも怯えなくていい午だった。