"地味な契約社員の妻が消えた日" 第11話
今度は、ハガ・ハス自の「個メールアドレス」から直接メッセージが届いた。 『森川、ふざけるな。すぐに俺の話にろ』
私は、わず声をげて笑ってしまった。 命令調。彼はまだ、私が相変わらず彼のリズムや都にわせてく「便利な部」だとい込んでいるらしい。
さらに10分、再びメールが届いた。 『ドイツ案件は、が社にとって極めてなのだ。君の力が必だ』
――必。 2の結婚活と社内活ので、彼から度たりとも向けられたことのなかった言葉だった。
私は静に返信を打ち込んだ。 『私が必なのではなく、あなたに必なのは「案件」そのものでしょう。案件のご相談は、すべて公式のビジネスフローに従ってってください。あなたと私のにおける個なやり取りは、すでにすべて産済みです』
その、彼からの返信が来ることは度となかった。
私はノートパソコンの画面を閉じ、での最初の営業計画の類へと向き直った。窓のに目をやると、アルプスの美しい連が、太陽のを受けて真っに眩しく輝いていた。 世界は、こんなにもるく広がっていたのだ。 私は、ただずっと、あの暗い青の独のような部に自分から閉じこもっていただけだったのだ。
それから1週。 ドイツ側の主な依頼主のい望により、チューリッヒの事務局が直接交渉をっていた「本来の相企業」
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が、が「ランゲージ・ソリューションズ」を正式な独顧問としてスポットで採用した。
ハガ・ハスが見失い、その価値に最まで気づけなかったを、のビジネスパートナーたちが先に見つけしたのだ。
そのの会議に臨むため、私は真っなパンツスーツにを包んでいた。 トレードマークだった黒縁のメガネはし、髪の毛はく品にまとめ、母の形見である粒の真珠のピアスを揺らした。もう、誰の目にも触れないように縮こまって俯く必など、どこにもなかった。
な国際会議の途で、ガチャリと扉がいた。 ハガ・ハスが入ってきた。そのすぐろには、青ざめた顔をした麗奈がぴったりと張り付いていた。
は、会議の席に座っている私を見た瞬、あまりの衝撃にそのでを止め、顔を完全に失った。 彼女の脳裏に焼き付いていたかつての「リノ」は、経理部の暗い片隅で、いブラウスを着て自分の理尽な指示をただひたすら黙って聞くだけの、冴えない契約社員だったはずだ。
その私が、今やドイツ側の最責任者の隣の席に堂々と座り、プロジェクトの総責任者として先方から丁に握を求められている。
「リーノ・グラッツ・ユヒア(こんにちは、森川代表)」 私は、流暢で完璧なドイツ語で相の挨拶に応じた。
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ハガ・ハスのたい線が、スッと私のに落ちた。 彼のので初めて、私を「妻」としてでもなく、「無名の部」としてでもなく、対等な「のプロフェッショナルな専」として、まともに認識した瞬だった。
私は彼に向かって、ごく軽く、ビジネスライクな会釈をした。 「ハガ社。以、社内の内ですれ違ったと同じ呼び方ですが……今回は、をげる必はありませんので」
会議が、張り詰めた空気ので再された。 ドイツ側の能な法律顧問が、プロジェクトの肝となる極めて鋭い質問を投げかける。 「――今回の契約において、現の法律の『政策変更』を契約の発条件とする、制法規の変更、政側の個別指導、そして環境の急激な変を、法文でどのように確に区別するつもりかね?」
麗奈は完全に固まり、元の資料をめくるだけで言も発することができなかった。 以の会議であれば、私は彼女の机の端にすっとメモを差しして救いをしていただろう。しかし、今の私は「相方の独顧問」というにいる。彼女を法な窮から助けす義務など、1グラムもしなかった。
プロジェクトの最責任者が、私に直接線を向けた。 「リノ、君のプロフェッショナルとしてのオピニオンを聞かせてくれ」
私は、元の万を静かに置いた。