"昭和40年、15歳で東京へ出た少年" 第14話
「……そうだ。おじいちゃんもな、ちょうどこの写真と同じに、この汽に乗って野に着いたんだよ」 「歳でしょ? 僕よりじゃん。……怖くなかったの? でらないにって、朝から晩まで働くなんて」
孫の素直な問いに、ミノルはし照れたように目元を細め、静かに首を振りました。 「怖かったさ。汽のじゃ、誰も喋らねえでな。みんな窓のを見て、泣くのをしてた。……けれどな、貧しかったけれど、みんなを向いていたよ。族のために働くことが、当たりだったんだ。誰かをむこともなく、ただ懸命、をかしていれば、は今より良くなるって、みんなが信じていた代だったんだよ」
孫は、資料集の写真と、目のにある祖父の節くれだったきなを、交互に見つめていました。 そして、ポツリと言いました。 「……おじいちゃんたちって、すごいね」 その無邪気な言に、ミノルは胸の奥がじんわりとくなるのを覚えました。 報われた、といました。 あの吹きすさぶの駅をた朝から。 自分が歩んできたまみれのは、決して無駄ではなかった。そのが、こうして平で豊かな代をきる孫の世代へと、確かに繋がっていたのだと。
気の良い午、ミノルは折、ふらりとに乗り、野駅を訪れることがあります。
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幹線がくへ潜り、巨なエキナカ商業施設が広がる現代の野駅には、かつてち込めていた炭の煙も、汽笛の轟音も、オート輪の排気ガスもありません。 き交う々は誰もがスマートフォンを覗き込み、軽やかな取りで自改札を通り抜けていきます。
ミノルは、かつて夜列が滑り込んでいたい平ホームの端にち、静かに目を閉じます。 コンクリートの柱の向こうから、今もかすかに聞こえてくるような気がするのです。 あのい蒸気関のドラフト音。 呼び集める引率者の声。 そして、あの列の内で、名もらぬまま別れた女の「うちの、もうすぐ桜が咲くんだ」という、震える呟きが。
あの列に乗っていた何万もの女たちは、今、どこでどうしているだろうか。 名もない町の片隅で、紡績の寄宿舎で、商のみ込み部で、彼らもまた、それぞれの所で歯をいしばり、それぞれの庭を築き、それぞれの昭、平成、令という代を駆け抜けていったはずです。 その名が歴史の教科にされることは決してありません。 けれど、本の復興と繁栄の元を支えたのは、違いなく、あの煤けた列からりち、油まみれので未来を削りした、彼ら「歳の子どもたち」
でした。
駅をて、野公園の桜並を見げると、折からのに吹かれて、満の桜のびらが、青空に向かってひとひら、またひとひらとい散っていました。
「……今も、綺麗に咲いたな」
ミノルは呟き、の柔らかなを全に浴びながら、ゆっくりと歩きしました。 その取りは、のあのと同じように、静かで、力く、だけを見つめていました。