"8年前の罠と、氷点下の泥まみれ" 第19話
しかし、自分のでるを止めることなど絶対にできなかった。
――優太……俺の息子。
自分がすらこれまでらなかった、自分の血を引いたたったの息子。そのが子が、今まさに自分のせいでの淵をさまよっている。
藤健は、駐へとり込み、待たせてあった専用にび乗った。
「病院へ急げ……! 分秒でもく着きやがれ……!」
運転が青ざめた顔で力くアクセルを踏み込んだ。
黒い級は、まるで狂った野獣のように都内のアスファルトのを猛烈な勢いで疾していった。
健は部座席の窓のを、ぼんやりと見つめていた。京の並みが、涙のせいで完全にぼやけて界から溶けしていく。
(みさき……すまない……本当に、本当にすまない……!)
という途方もない歳が遅すぎたことは分かっている。そのの、佐藤みさきが像を絶する獄の苦しみをわい続けたことも分かっている。
しかし、今からでも遅くない。
自分ので、するが子の命を絶対に救わなければならない。そして、佐藤みさきに対して、これまでのすべての罪をから詫び続けなければならない――たとえ、彼女から許されることがなかったとしても。
は、猛烈なスピードのまま総病院の巨な正面玄関のにキキーッと急した。
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健はのドアがくのを待つこともせず、自ら力任せにドアを押しけてびした。
病院の自扉をくぐり、狂ったようにロビーを駆け抜け、再びあの「〇号」へと続く廊へと突入した。
今回は、誰にも自分を止めることはさせない。
息子の病のドアのに、健は息を荒く乱しながらたどり着いた。
(収束:病のドアをけた健を待っていたのは、が子の健気な笑顔と、みさきとの穏やかなの始まりだった。/过渡:親子としての絆を確認した健は、いよいよドナーとしての適検査と、が子を救うための運命の科術へと踏みす。)
藤健は、病のドアノブにを掛けた。
のひらがや汗で濡れていた。臓の鼓は、これまでので経験したどんな巨ビジネスの交渉よりも遥かに激しかった。
ガチャリ……と、慎にドアがいた。
部のでは、佐藤みさきがベッドのに座り込んでいる優太に、優しく絵本を読み聞かせているところだった。
「――ママ、ぼくね、おっきくなったら、かっこいいロボットの運転さんになりたいな」
優太がか細くもるい声で言った。
「ふふっ、優太ならきっと素敵な運転さんになれるわよ」
みさきは、その顔にわずかながらも柔らかい笑顔を浮かべていた。その姿は、あの事現でまみれになっていた「鈴のおばさん」
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ではなく、まぎれもなくするが子を命がけで守る優しい母親の顔そのものだった。
の笑い声が、病の空気を温かく満たしていた。
健は、その平な親子の姿を目の当たりにし、これ以を踏み入れることが申し訳なくなり、わずそのでちすくんだ。
しかし、みさきがふと顔を向け、そこにち尽くしている健の姿に気づいた。
「……健さん……?」
みさきは驚いたように目を丸くし、そっとベッドからちがった。
健はゆっくりと病のへとを踏み入れ、の央へと歩み寄った。そして、彼は何のためらいもなく、そので力なく両膝をへと突いた。
――ドスン……!
い音が、静かな病のに響き渡った。
佐藤みさきは、息をのんだ。
「い、体何をされているんですか……? ってください、健さん……!」
健はをく、につくほどにげた。その目から、い涙が再びとめどなくあふれし、のタイルのにポタポタと落ちた。
「……すまなかった……!」
震える、消え入りそうな声だった。
「すべてを……すべてをった……。おがどんなに苦しかったのか、どんなに理尽な獄をきてきたのか、そのすべてを……今、ようやくった……!」
みさきは、その言葉のをすぐに理解することができなかった。ただ、かつて自分を酷に追いしたはずの夫が、今自分の目のでまみれになりながら、あるいは血を流しながら、子供のようにしゃくりげて謝罪している姿を、茫然と見ろしていた。