"8年前の罠と、氷点下の泥まみれ" 第13話
しかし、当だけは破格のさだった。働けば万円、ヶ休まず働けば万円。その血を吐くような労働で得たおのすべてが、する優太の命を繋ぐための延命治療費へと消えていった。
佐藤みさきは、が子をかすためだけに、自らの肉体とプライドを完全にすり減らし続けていたのだ。
(収束:バスが病院のに到着し、みさきは急いで病へと駆け込む。/过渡:無菌のベッドで青い顔をして眠るが子・優太の姿を目の当たりにし、彼女の胸は再び締め付けられるように痛む。)
バスが、総病院の巨な正面玄関の目のに滑り込むようにしてした。
みさきは慌てて席をち、ステップをりて病院の自扉をくぐった。
ロビーの混みを縫うようにして駆け抜け、エレベーターのボタンを連打した。
「――階……っ!」
チン、と乾いた音がしてエレベーターの扉がくと、彼女は目散にびした。廊をものすごい勢いでり抜け、目の「〇号」のドアのにたどり着いた。
そこは、優太が入院している無菌病だった。
みさきは呼吸を荒く乱しながら、慎にドアのノブを回してへと滑り込んだ。
病のは、の喧騒が嘘のように静まり返っていた。
窓際のいベッドのに、さなが子がぐったりと横たわっていた。
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歳になったばかりの優太の顔は、驚くほど真っだった。
彼は目を固く閉じたまま、浅い呼吸を繰り返していた。そのの穴には、さっきの血を止めるためのガーゼが痛々しく詰められていた。
みさきはが子のベッドの横に、崩れるようにしてしゃがみ込んだ。
そして、優太のさくえ切ったを、自分の両でそっと包み込むようにして握りしめた。
「……優太……」
みさきはく、掠れた声で呼びかけた。その声は震え、涙で滲んでいた。
「……ママが来たよ……ごめんね、遅くなって……」
しかし、優太からの返事はなかった。薬の響や疲労のあまり、く眠り込んでしまっていたからだ。
みさきは眠っている優太の幼い顔を、じっと見つめた。
見るたびに、あの男の面がく蘇ってくる顔ちだった。特に、涼しげにスッと伸びたい目元は、実の父親である藤健のそれをそっくりそのまま受け継いでいた。
「……パパの顔を、度だけでもあなたに見せてあげたかったのに……」
みさきは誰に聞かれることもなく、孤独につぶやいた。
優太は、自分の父親が誰なのかを全くらなかった。これまでに度も、父親に会ったことがなかったからだ。
幼い優太から「パパはどこにいるの?」と何度も尋ねられるたびに、みさきは胸を引き裂かれるいでこう嘘をついてごまかしてきた。
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「パパはね、すごく偉くて、お仕事で世界をび回っている忙しいだから、今はまだここには来られないの……だけど、いつか必ず会いに来てくれるからね」
それは、しい嘘だった。
藤健は、が子である優太のすら切らなかった。仮にったところで、当の酷な彼の性格を考えれば、自分の子供だと素直に認めてくれるかどうかすら分からなかった。
それでも、優太に対して「パパはおを捨てた」「ママをから追いしただ」などと、幼いにい傷をつけるような真実を告げることなど、母親であるみさきには到底できなかった。
みさきはくいため息をついた。
「……優太。ママがどんなことをしてでも、絶対にあなたのおを稼いで、この病気を治してあげるからね……必ず、元気な体にしてあげるから……」
彼女は眠っているが子のさなを、自分の頬にそっと寄せ、温めようとした。
――まさに、そのだった。
病のいドアが、カチャリと静かにいた。
佐藤みさきは驚いてビクリと肩を揺らし、ゆっくりと顔を向けた。
そして、そので完全に凍りついた。
病の入りのそこに、藤健がっていた。
(収束:病のドアのにち塞がった元夫・健の姿に、みさきは恐怖と揺で体を直させる。/过渡:健が病のベッドを凝し、そこに横たわるの姿と自分の血筋に気づき始める決定な瞬へと物語がむ。
)
病のドアのに、信じられないことに藤健が佇んでいた。