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"8年前の罠と、氷点下の泥まみれ" 第6話

の同を誘って、俺から額の慰謝料でも再びむしり取ろうとしているに違いない……!)

藤健はそう自分にい込ませようとした。そうわなければ、自分のが耐えられなかったからだ。

しかし、胸の片隅の最も黒い澱(おり)のような所が、どうしようもなく居悪くざわめいていた。

佐藤みさきのあの顔が、脳裏からどうしてもれなかった。セメントのにまみれ、ひび割れ、荒れ果てた唇。極寒ので震えていた。そして、あのすべてを諦めきったような、んだ魚のような差し――。

の佐藤みさきは、あんなではなかった。もっと堂々としていて、プライドがく、何事にも妥協しない頑固な女性だった。それなのに、今の彼女は、何者かにのすべてを押し潰された者のようになっていた。全てを諦め、ただきるためだけに械のようにいているそのものだった。

を激しく振った。

「気にするな……! あの女がどうなろうと、俺のったことじゃない。に完全に終わった縁じゃないか……!」

彼はそうやって無理やりを引き締め、現に待たせてあった専用へと乗り込んだ。

「会社へ戻れ」

運転たく告げた。が静かに発した。

窓のを流れる景をぼんやりと眺めた。事現の建物が、むにつれてざかっていく。

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しかし、なぜか何度も首がろへと回ってしまった。ルームミラーの向こうに広がる現の方向を、どうしても気にしてしまう自分がいた。

(今頃、あの階のあたりで、あいつはまたあのい背負子を背負って階段をりしているはずだ……。氷点度を優に超えるこの殺な寒さので、の男たちすら逃げすような環境で、なぜ……なぜあそこまでしてあの女は働かなければならないんだ……?)

彼女は「払いをもらったから今やらなければならない」と言っていた。そこまでして今に稼がなければならない、切羽詰まった何らかの事が彼女にあるのだろうか。

「いや、くだらないことを考えるな……」

は再びをぶんぶんと振った。

しかし、度ざわつき始めたを鎮めることはできなかった。度たりともすことすらなかった女。自分が完全にの奥底から切り捨てたはずの元妻が、最も惨な姿で突然目のに現れ、烈な爪痕を残していったのだ。

は疲れたように目をしっかりと閉じた。

り、裏切りへの疑、そして自分でも説のつかない奇妙な罪悪が複雑に絡みい、彼のを激しくかき乱した。

い、最悪のになりそうだった。

(収束:部座席で健が複雑ないに囚われている頃、現では昼休みのサイレンが鳴り響く。

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/过渡:作業員たちがかいプレハブの堂へ向かう、過酷な現実を背負ったみさきは、誰にも見つからないの暗がりへと消えていく。)

正午を迎えた。

事現全体に、昼休みをらせるきなサイレンの音が鳴り響いた。

――ウーッ……!

苦しい音が、え切ったビル群のに広がっていった。数ない作業員たちは、ようやく訪れた休息のに作業をピタリと止め、温かい事を求めて堂の方へと向かった。

角に仮設で建てられたプレハブの堂のでは、型の油ストーブがフル稼働で焚かれていた。気は氷点度に迫る勢いだったが、プレハブのだけはストーブの気でそれなりにかかった。

作業員たちが集まってガヤガヤと席に着いた。から持参した弁当を広げる者もいれば、業者が用した温かい定を受け取る者もいた。湯気がもうもうと噌汁、炊きてのいご飯――この極寒の候にはこのない最の昼だった。

しかし、そのにたっただけ、姿が見当たらない物がいた。

「鈴のおばさん」こと、佐藤みさきだった。

彼女は堂の温かい空には切姿を現さなかった。現の田が、作業員たちの顔ぶれをざっと見渡して首をかしげた。おい、鈴のおばさんはどこへった?」

すぐ隣に座っていた作業員のが、面倒くさそうに首を振った。

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