"昭和21年、港で「娘ではない」と言った母" 第6話
布団に入ってしばらくした頃。
文子が突然起きがった。
「お母ちゃん」
「どうしたの」
「ちゃん、いなくなるの?」
「千代さんが迎えに来る予定よ」
「そう」
文子はまた横になった。
妙子が背へ布団を掛ける。
すると文子がさく言った。
「私も、いなくなった、お母ちゃんがすぐ別の子を連れてったのかとった」
妙子のが止まった。
「文子」
「分かってる。違うって」
声は平静だった。
「でも、さっきちゃんがお母ちゃんって呼んだ、ちょっと嫌だった」
妙子は隣へ座った。
「嫌でいいのよ」
文子が驚いて母を見る。
「ってもいい。しくてもいい」
「お母ちゃん、ちゃんのこと好き?」
妙子は嘘をつかなかった。
「好きよ」
文子の顔がし曇る。
「でも文子の代わりじゃない」
「本当?」
「本当」
妙子は娘のを握った。
「文子がいなくなった穴を、ちゃんで埋めたわけじゃない。ちゃんにはちゃんの所ができたの」
文子は黙っていた。
「文子の所は、ずっと空いたままだった」
しばらくして。
文子が妙子のをく握った。
「じゃあ、もうさないで」
「さない」
妙子は答えた。
けれどのではった。
子どもをするということは、
さないことだけではない。
には、れても戻ってこられる所になることなのかもしれない。
翌。
森千代がを迎えに来た。
さな呂敷包み。
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布形。
妙子はの着替えと櫛、で使った拭いをまとめた。
「これも持っていって」
は受け取った。
「うん」
妙子は抱きしめたかった。
けれど千代ので迷った。
の本当の母親は目のにいる。
自分がく抱けば、千代を傷つけるのではないか。
そんな迷いが瞬まれた。
それを見たの方から、妙子へ抱きついた。
「お母さん」
千代の表が揺れた。
妙子はもうしなかった。
をく抱いた。
「元気でね」
「うん」
「千代お母さんの言うこと聞くのよ」
が顔をげる。
「妙子お母さんのところ、また来ていい?」
妙子は千代を見た。
千代はし黙った、さく頷いた。
「いいわよ」
の目がるくなった。
「本当?」
「ただし、ちゃんとうちにも帰ってきなさい」
「うん」
その言葉で、はようやく千代のを握った。
がをていく。
は何度も振り返った。
妙子も見送った。
角を曲がり、姿が消えた瞬。
妙子は玄関へ座り込んだ。
文子が隣につ。
「お母ちゃん」
「丈夫」
妙子は泣きながら笑った。
「文子が帰ってきたんだから」
それでも涙は止まらなかった。
文子はしばらく黙っていた。
それから母の隣へ座った。
「泣いていいよ」
妙子は娘を見た。
文子はを向いたまま続けた。
「私がちゃん嫌いにならないから」
その言葉に妙子はさらに泣いた。
けれどが実母のもとへ戻ったからといって、全てがうまくいったわけではない。
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か。
森千代がでのを訪ねてきた。
顔がひどく疲れていた。
「相談があります」
妙子は胸騒ぎを覚えた。
「に何か?」
「毎晩、泣くんです」
千代は俯いた。
「寝るになると妙子さんの名を呼んで」
妙子は黙った。
「私が抱こうとすると、体を固くすることもあります」
千代の目から涙が落ちた。
「私のことを嫌いなんでしょうか」
「そんなこと」
「でも、自分の娘なのに、何をしてやればいいのか分からなくなりました」
その言葉を聞き、妙子は自分と同じだとった。
文子が戻ったら以の母娘に戻れるとった。
千代も、が戻れば元通りになるとった。
けれど子どもたちは、失ったを抱えて帰ってきた。
妙子は言った。
「ちゃんを、々こちらへ遊びに来させませんか」
千代が顔をげる。
「私が会いたいからだけじゃありません」
妙子は続けた。
「ちゃんが、どちらかつを選ばなくていいように」
千代はい黙っていた。
「私、本当は」
さな声だった。
「妙子さんをみそうになったことがあります」
妙子は驚かなかった。
「当然だといます」
「娘が別の女のをお母さんと呼ぶんですから」
千代はを握った。
「でも、あの子がきて帰ったを否定したら、私まであの子のをすことになるような気がして」
妙子は目がくなった。
「千代さん」
「を、々ここへ来させてください」
妙子はくをげた。