"10倍の下剤と検事になった嫁" 第1話
私は静かに目をけ、たいにをついた。
隣では夫の健が背を向けてい鼾をかいている。
計の針は午5を回ったところだった。
私は音をてないように布団から抜けした。
今は私が目指してきた検事任官試験の最もな面接のである。
司法試験に格し、修習として過酷な々を乗り越えてきた。
全てはき父との約束を果たすためである。
私は音をてないように着替えを済ませた。
ふと、1階の台所からかすかな物音が聞こえてきた。
義母の恵子である。
普段なら私が朝の準備を終えるまで起きてこないだった。
私はし議にい、階段を忍びでりた。
すりガラスの引き戸の向こうに、義母の背が見えた。
義母はさな声でつぶやいた。
「これで今の試験は受けられないわね。ずっとにいなさい」
義母のさなつぶやきが静かな廊に漏れ聞こえた。
私は息を潜め、建具の隙から台所を覗き込んだ。
義母は私の席に置かれた噌汁の椀のに、さな包みをけていた。
いがわかめと豆腐の噌汁のにパラパラと落ちていく。
義母は箸でそれをくかき混ぜた。
はすぐに溶けて何もなかったかのように見えた。
私のはかすかに震えていた。
りでもなく、恐怖でもない。
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ただそこまでして私のを妨害しようとする義母の執に言葉を失ったのだ。
私はすぐに台所にび込んで義母を問い詰めることはしなかった。
法律を学ぶ者として、でくことは最も危険だとっているからである。
今の段階で騒いでも、ただの塩だと言い逃れされるだけだ。
私は音をてずに階段をしがり、わざときな音をててり直した。
私が台所に入ると、義母は瞬だけ肩をビクッと震わせた。
私は義母の背に向かって声をかけた。
「おはようございます、お義母さん」
義母は決して私と目をわせようとはしなかった。
「ああ、由美さんおはよう。今はいのね」
私は自分の席に座りながら答えた。
「はい。試験がありますから」
義母は再び背を向けた。
「そう。まあ、頑張りなさいな」
私は目のにある噌汁を見つめた。
見た目も匂いもいつもと変わらない。
私はエプロンのポケットから、さな空の目薬の容器を取りした。
昨夜、きれいに洗って乾かしておいたものである。
いつか何かの証拠を集めるために用していたが、まさか今使うことになるとはわなかった。
私はわざとらしく廊の方へ線を向けた。
「お義父さんの部から声が聞こえましたが」
義母は舌打ちをして、に台所をていった。
その数秒の隙に、私は噌汁の汁だけをスポイトのように容器に吸い込んだ。
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キャップをしっかり締め、ポケットの奥にしまう。
これでで成分を検査することができる。
証拠は確実に押さえた。
やがて2階から夫の健がりてきた。
彼はあくびをしながら席に座り、私を瞥した。
「まだ検事ごっこなんてやってるのか」
私は黙って彼の元を見つめた。
健はたい声で続けた。
「いい加減諦めて、親父の介護に専しろよ。君がにいてくれればヘルパー代も浮くんだ。嫁の務めを果たせよ」
私は何も言い返さず、ただ元の箸を見つめていた。
言い返す価値もないほど私のはえ切っていたからだ。
続いて義妹の美穂が慌ただしくりてきた。
美穂は私の隣に座り、きなため息をついた。
「ああ、緊張する。今は学の教員採用の面接なんだから」
義母が台所に戻ってきて、美穂に甘い声をかけた。
「美穂ちゃん、しっかりべてね。あなたなら絶対に格するわよ」
義母は私の方へ向き直り、満面の笑みで椀を指し示した。
「さあ、由美さんも全部んでね」
義母は急須にお湯を入れるため、再び背を向けた。
健はスマートフォンにでこちらを切見ていない。
美穂は自分の髪を直すのに必だった。
私は誰も私を見ていないその瞬を逃さなかった。
音もなく、自分の椀と美穂の椀をすり替えた。
は同じわかめと豆腐であり、見た目では絶対に分からない。
私はすり替えた全な噌汁をに取った。