"七歳の女の子が握りしめた富士山の木札" 第23話
今回、さ苗さんは途でちがることなく、最まで話すことができた。
帰りでさ苗さんが言った。
「は名をいただけで帰りました。今は全部けましたね。宮さんが隣にいたからです」
そう言うとさ苗さんは俺を見て微笑んだ。俺もそんなさ苗さんを見ると自然とほほが緩んだ。
3の終わりに俺たちは籍を入れた。庭先の楓が芽吹き始めた頃だ。2はアパートを引き払って湯の2階に移ってきた。入籍、さ苗さんは俺をお父さんと呼ぶようになった。も初めは恥ずかしそうにしていたが、今ではお父さんと呼んでくれるようになった。
変わったのはこの2が毎朝2階からりてくることだ。それから、俺は季の入った浴のと壁を直することにした。具を持ってきたのはあの老だ。
洗いのタイルと板を入れ替えるのに4かかった。直し終えた、俺は男湯の壁を見てを止めた。富士が塗り直されていた。褪せた青が戻って、のがはっきりしている。祖父がきているうちに塗れなかった絵だ。
「お父さん、届く?」
の指定の棚が1段くなっていた。1番がの肩のさにあったのだ。きっとあの老が黙って付け替えてくれたのだろう。
その夜は直してから最初の営業だった。湯を張るとが浴槽の縁に来た。
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のひらではなくの甲を沈める。俺が教えた通りの付きだ。
「42度、よし」
「ぴったり」
1とし。この子はりない銭を握ってのにっていた。今、同じがうちの湯の温度を測っている。
「、誕はまだ先だが何か欲しいものはあるか?」
「もう全部ある」
は腰へを当てて牛乳をみ、それから箱へった。棚の1番にを伸ばす。背伸びをしない。もう誰かに持ちげてもらう必も、踏み台も必ない。
は自分ので富士の札を棚に戻した。
「ただいま」
その声を聞きながら、俺は番台で正面を閉じた。も5に起きて釜にを入れる。湯を42度にしてのれんをす。
このに来るのにあののみたいな子がいたら、きっと俺は同じことをする。でももう嘘はつかない。「試し湯」なんて言わない。
「うちの湯から入っていけ」
そういうだけだ。