"3か月寝たきりの娘を、婿に黙って連れ出した日" 第11話
娘がける窓
「46になったよ」
救から1半が過ぎた朝、洗面所から娘の声がした。私は台所のをめ、廊へ顔をした。
さやかは体計を片づけ、自分で記録用のノートに数字をいていた。34kgだったと医師に告げられたのことを、私は今も忘れていない。けれど、娘は今の数字を確かめると、体計より先の予定へ目を向けた。
「今は午、し仕事をするね」
以の同僚に紹介してもらい、週2、宅で帳簿の理を始めていた。く座り続けることはまだ難しく、仕事の量も相談しながら決めている。
部には、世田のから運んできた机があった。端に残るさな傷を娘は気にせず、そのにノートとパソコンを置いた。通院のと仕事をするをいた予定表も、自分で見える位置に貼っていた。
「疲れたら、ちゃんと休んでね」
私が言うと、さやかは振り向いた。
「うん。お昼になったら呼んで。途でも、困ったらこっちから声をかけるから」
私は頷き、台所へ戻った。昔なら、み物を持っていくたびに具を尋ね、顔を確かめていたとう。今も配はする。けれど、娘が自分で決めた午を、私ので埋めたくはなかった。
窓際のさな鉢へをやり、洗濯物を干した。私自の膝の通院も、娘の予定とは別に決めていた。
引っ越してから、所の図館にもくようになった。
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借りてきた本は、卓の私の席に置いてある。さやかを見守るために何もせず待つが減り、娘も私が本をいているときは、読み終えるまで待ってくれることがあった。
昼、娘の部から子を引く音がした。私は鍋の蓋を取ったところだった。
「何を作ってるの。いい匂い」
だしのりを追うように、さやかが台所へ来た。仕事を終えたのかと尋ねると、予定していたところまでできたと答えた。
「豆腐と卵の汁物。ご飯も炊けているよ」
娘は鍋を覗き、葱も入れたいと言った。私は蔵庫の所を指し、まな板をした。さやかが子に腰をかけて刻んでいるに、私は器を並べた。
背には傷痕が残っている。気や姿勢によって痛むがあり、夜に目が覚めることもある。そんな朝は予定を変える。仕事を休むと連絡するのも、どのくらい伝ってほしいかを伝えるのも、娘がしずつできるようになっていた。
卓につく、さやかは居の窓へ歩いていった。
取っを回し、窓をゆっくりける。庭の葉が揺れ、がレースのカーテンを膨らませた。娘は片で布をよけ、そのまましばらくを見ていた。
私は窓を閉める理由を探さず、汁物を椀へよそった。台所から流れた匂いが、入ってきたに混じった。
「このくらいけておくね」
娘が言い、卓へ戻ってきた。
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私の返事を待って取っを握り直すことはなかった。
さやかは椀を両で持ち、ひとんだ。自分で刻んだ葱を箸で寄せ、もうひとすすると、目元がし緩んだ。
「おいしい。午も、しを歩けそう」
「の方までく?」
「今は、角のおまでにしようかな。帰りに休めるし」
娘が決めた距に、私は頷いた。はでも、また別のでもよかった。
ご飯をべ終えたさやかは、箸を置いて、私のの椀を見た。
「お母さんも、ちゃんとべてね。私のことばっかり見てる」
言われて、私は笑った。汁物はまだ温かかった。自分の椀を持ってむと、娘もしたように箸を取った。
しばらくして、さやかが空いた椀をし持ちげた。
「おかわり、ある?」
「あるよ。私も、もうしべようかな」
私は鍋を卓へ運び、娘が差しした椀に、湯気のつ汁をよそった。