"20人の宴会、妻は2つの鞄を用意していた" 第1話
2い帰宅
玄関をけた瞬、私はを止めた。
磨かれたパンプスや踵のい革靴が、廊を塞ぐように並んでいる。数えると20あった。リビングからは女たちの笑い声とグラスの触れう音が聞こえ、ローストビーフとの匂いが玄関まで流れてきていた。
福岡張の最終会議が止になり、私は予定より2く帰宅した。刻は午320分。妻の美紀には驚かせようとい、帰ることをらせていなかった。
キャリーケースを置き、奥へむ。リビングでは母の敏子が着物姿で座に座り、20の友を相に声を弾ませていた。
「このマンション、息子が7600万円で買ったの。駅にもいでしょう」
テーブルには刺、ぷら、牛肉料理、果物が隙なく並び、には空いた酒瓶が何本も転がっていた。それなのに、美紀と5歳の娘、優奈の姿だけが見えない。
嫌な予がして、私はキッチンへ向かった。
流し台には、宴会で使われた皿とグラスがのように積まれていた。美紀は油染みのついた古いTシャツにゴム袋をはめ、俯いたまま皿を洗っている。その隣では、優奈が踏み台に乗り、用のい皿を両で支えていた。
蛇からているのは湯だった。洗剤の泡に包まれた優奈の指は、赤く腫れている。
「優奈」
呼びかけると、娘の肩がきくねた。皿がから滑り、流しのでい音をてる。
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振り返った美紀の顔から血の気が引いた。
「どうして……じゃなかったの」
帰宅をぶ声ではなかった。見つかってしまったの声だった。
私は優奈を踏み台から抱きろした。さなはを持ち、指先の皮がくふやけている。
「誰に洗わせられた?」
優奈は答えず、リビングの方を見た。その線だけで分だった。
私は娘を美紀に預け、リビングへ戻った。母はようやく私に気づき、満面の笑みでちがった。
「健、かったのね。ちょうどよかったわ。皆さんに挨拶して」
私は音楽プレーヤーの源を切った。突然静かになった内で、20の線が斉に集まる。
「母さんに招待された20の方。申し訳ありませんが、10分以内に全員お帰りください」
笑顔が消えた。
「ちょっと、健。何を言ってるの」
「ここは宴会ではありません。妻と娘が暮らすです」
客の1がそうに眉を寄せた。
「私たちは敏子さんに呼ばれたのよ。途で追いすなんて失礼じゃない?」
「招待した母には、こので20の宴会をく権限がありません」
私は管理へ話をかけ、来客の退確認を頼んだ。母が腕をつかもうとしたが、そのを避ける。
料理を包もうとする者、文句を言いながら靴を履く者、私と目をわせず逃げるようにる者。母の隣に座っていた女性は、優奈のを度見てから、持ちかけた皿を黙ってテーブルへ戻した。
そのも美紀はキッチンからかなかった。客が帰ってもした様子はなく、割れたグラスの破片を拾い、濡れたを拭こうとしている。私は雑巾を取るを止めたが、美紀は反射にをすくめた。
私がにいるのに、妻はまだ叱られるとっている。その事実の方が、母の声よりもかった。
10分をし過ぎたところで、最の1が玄関をた。廊に残ったのは酒との混ざった匂いだけだった。
「母親に恥をかかせて、何がしたいの!」
母の声を背で聞きながらキッチンへ戻ると、美紀は濡れたにったまま、用してあった旅鞄を見つめていた。
「それは何だ」
しばらく沈黙した、美紀は優奈の肩を抱き寄せた。
「あなたが帰ってこなかったら、今夜、優奈とこのをる予定だったの」