"26人が去った屋敷――会長の息子は、貧しい家政婦の腕で泣きやんだ" 第11話
父親の腕
ノートをけば、どうすればいいか分かるとっていた。けれど、匠が読んでいるも、斗は廊を見て泣いていた。事の温度を確かめ、スプーンを替えても、子どもは子へづこうとしない。
匠はページを戻した。「べなかったは、そのの様子も残す」。さやかの文字の脇に、千代がきした交代の記録があった。
斗は事を見るから、誰かを探していた。
「さやかさん、いないね」
に座って声をかけると、斗はようやく父親を見た。匠が腕を広げてもすぐには来なかったが、づくよう急かさず待つと、やがて膝へ片をついた。
抱きげた体は、っていたよりかった。泣くたびに背が揺れ、シャツの肩が濡れていく。匠はさやかのをいそうとしたが、途から節が分からなくなった。それでも声を止めずにいると、斗の呼吸がしずつ静かになった。
千代が事をげようとするのを、匠はをげて止めた。斗が自分から器を見始めたので、膝に座らせたまま、ひとだけ差しす。
がいた、匠は驚いて千代を見た。彼女はげさに褒めることなく、拭きをそばへ置いてくれた。
べ終えるまでに予定よりがかかった。仕事の始を調し、あとは千代へ交代する。昼の様子は帰宅してから自分で記録を読み、夜は斗の隣で絵本をいた。
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さやかがいたも、同じが流れていたのだと分かった。誰かが待ち、片づけ、次のへ伝えていた。そのに自分は何をしていたのか、ノートのを見るたびに考えた。
数、匠はさやかへ連絡した。斗と会ってもらえるか、都のよいがあるかと尋ねたあと、仕事へ戻ってほしいという依頼ではないとき添えた。
返事はそのの夕方に来た。弟の面会を終えたあとなら、病院のくの公園で会えるという。
約束の、さやかはベンチのそばで待っていた。匠が斗を面にろすと、子どもは彼女を見つけて駆け寄った。しゃがんで受け止める腕を見て、匠は胸が詰まったが、2のへ言葉を挟まなかった。
斗は持ってきたのボールを見せ、さやかのへ押しつけた。彼女が転がすと、いで追いかけていく。匠は歩へないよう反対側へ回り、拾ったボールを返した。
「朝ご飯、べられていますか」
さやかの問いに、匠はその朝のことを話した。全部はべなかったが、自分からスプーンを持ったこと。着替えを嫌がったので、襟を確かめて別のにしたこと。
「ノートに、ずいぶん助けられている」
「千代さんたちにもきしていただければ、そのうち私がらない斗くんのことが増えますね」
匠はボールを拾う息子へ目を向けた。
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彼女がまた世話を引き受けてくれるのを待つことは、もうできなかった。
「もう1つ、お願いがある」
匠は調査を担当する監査役から預かった説を渡した。会社の支払いは会社側の原本で確認する。そのうえで、さやかへの与支払いと休暇の扱いについても、当事者に確かめたいという内容だった。
「君の資料を勝に渡すことはしない。確認を受けてもらえるだろうか」
「私について必な部分なら。弟の診療のことまで広げないでください」
「分かった。そう伝える」
帰る、斗はまたさやかのを握った。匠が隣で待っていると、彼女は子どもに次の約束を急がず、今はここで別れることを伝えた。泣きそうな顔の斗を、今度は父親が受け止めた。
へ戻ったところで、監査役から着信があった。斗をチャイルドシートへ座らせてから通話をつなぐと、落ち着いた声が告げた。
「あの300万円の受取が確認できました。契約と決裁の記録も揃っています」