"26人が去った屋敷――会長の息子は、貧しい家政婦の腕で泣きやんだ" 第10話
置いていくのは、4冊
匠は、名札の横に置かれたを受け取った。署名のまで目を通し、折らずに自分の帳へ挟む。
「確認の結果は、君にも伝える。資料を受け取った者への説もする」
さやかは礼を言い、客をた。廊へ戻ると、指先に名札の具の跡が残っていた。胸が軽くなることはなく、むしろこれからの活を考えるとがすくんだ。それでも、先ほどの言葉を取り消そうとはわなかった。
千代との相談で、引き継ぎを終える3に退職することになった。さやかは病院に通える所にさな部を期で借り、以仕事を紹介してくれた窓にも連絡した。与細と雇用契約、匠との勤務に関するやり取りを、自分の鞄へまとめる。
秘から届いた封筒には、あの写真と、300万円についての指摘が入っていた。資料を渡された役員の覧も添えられている。さやかは封筒にを置き、受け取ったことを返信した。ここをても、かれたことまで消えてなくなるわけではない。
最の勤務の午、子ども部のいテーブルに、いノートを4冊並べた。表には事、眠、気づいたこと、引き継ぎと、それぞれいてある。最初に千代からもらった1冊では探しにくくなり、内容ごとに分けて使うようになったものだった。
8週あまりの記録には、べなかったも、寝つけなかった夜も残っていた。
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由里に破られたページの写真を貼った箇所は、角だけがしくなっている。
「追加の事を欲しがるは、器の縁を触ります。顔を背けたら、すぐに次のひとをづけないで、し待ってみてください」
千代が頷き、交代するスタッフが付箋にきした。匠は向かいに座ったまま、さやかがページをめくるを見ていた。
「調査が終わるまで、残ってもらえないだろうか」
説が途切れたところで、彼が言った。
「斗も、まだ君を探す。急にいなくなられると……」
さやかはノートを閉じ、斗が積みを並べているへ目を向けた。聞こえていないようで、子どもは々こちらを見ている。
「ですから、この3は皆さんと緒に過ごしました。今も、黙っていなくなるつもりはありません」
「君が嫌なら、祖母にはもうをさせない」
「私があので何を言われたかは、お聞きになっていましたよね」
匠がを閉じた。さやかは彼の困った顔を見て、いつものように丈夫ですと言いそうになった。しかし、その言葉でまた自分の気持ちを片づけるのはやめた。
「ここで働き続けるのは難しいです。斗くんには、会も千代さんたちもいらっしゃいます」
匠はしばらく黙り、それから4冊を自分のほうへ引き寄せた。
荷物を玄関へ運ぶ、斗もついてきた。さなが鞄の持ちにかかり、さやかを見げる。
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「おさんぽ?」
「今は、さやかのおうちへ帰るの。斗くんは、お父さんとここで過ごすよ」
斗は言葉の全部を分からないまま、彼女の膝へ寄りかかった。さやかは抱きしめ、その温かさを確かめた。会えなくなると言われたわけではないのに、胸の奥がく痛んだ。
「また会えるように、お父さんと相談するね」
抱き直したい腕をほどくと、斗が泣き始めた。匠が隣にしゃがんでを差しす。さやかは子どもの目を見て別れを告げ、千代に部の鍵を返した。
まで来ても、泣き声がに残っていた。ち止まりかけた、玄関の奥から匠の声が聞こえた。
「お父さんは、ここにいるよ」
さやかは鞄を持ち直し、坂をりていった。
翌朝、斗は朝の子に座らず、廊のほうを見ていた。匠が呼んでも、エプロンのない父親の胸を見てから、また扉へ顔を向ける。
匠はいつもさやかが座っていた所に腰をろし、4冊のうち最初の1冊をいた。