"26人が去った屋敷――会長の息子は、貧しい家政婦の腕で泣きやんだ" 第7話
病院からの話
さやかは千代ので通話を終え、斗の昼寝と事について、必なことだけを伝えた。声はているのに、鞄のがうまくかなかった。千代がそっと受け取り、財布と話をへ入れてくれる。
「こちらは引き継ぎます。弟さんのところへってください」
玄関まで来た匠は、事を聞くとをすよう頼んだ。自分もくと言いかけたが、階段の途から聞こえた斗の声にを止める。
「君は先にってくれ。こちらのことは配しなくていい」
さやかはをげ、用されたに乗った。窓の向こうを見慣れた坂が流れていく。優太から朝に届いた、あとで話してもいいかといういメッセージを、何度もき直した。
病院では、治療にいがて、追加の検査と治療をっていると説された。さやかは面会できるまで子に座り、頼まれた持ち物を帳にいた。何かしていないと、朝の返事をもっとくしていればと、答えのないところへ考えが戻った。
優太に会えた、彼は目を閉じていた。名を呼ぶと、わずかに瞼がく。さやかはベッドの脇に座り、今は顔を見るだけで帰るからと伝えた。
「仕事、平気?」
掠れた声を聞き、さやかはようやく息を吐いた。
「代わってもらえた。あんたは今、それを配しなくていいの」
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優太はさく頷き、また目を閉じた。その顔を見ているうちに、11、両親を事故でくしたのことが胸をよぎった。さやかは17歳で、優太は11歳だった。親戚の力を借りながらも、この子にまで自分のを背負わせまいと、くそうってきてきた。
病をると、匠から連絡が来ていた。数、与の減らない特別休暇を取れるようにしたことと、必なら着替えを届けるという内容だった。さやかは病院名と待ちわせ所を返し、礼を伝えた。
翌、入の待で会った匠は、さな鞄と温かいお茶を持っていた。
「に入る必はないとったので、ここで待っていた」
「ありがとうございます。弟はまだ治療が続きますが、昨よりは話せました」
お茶を両で包むと、えていた指がしずつ温まった。匠は斗が夕にしをつけたことと、寝るの絵本は千代に教わったことを話した。声を変えて読むと驚かれた、と真面目に言うので、さやかはわず笑った。
「急にきな声をさなければ、丈夫だといます」
「そこまでいてある記録が欲しかったな」
く笑ったあと、匠は鞄の持ちをえた。
「費用のことも、困っているなら相談してほしい」
「医療費の制度は、優太と相談員の方に聞いています。治療以の費もありますけど、まずは予定を緒に決めるが欲しかったので。
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お休みをいただけて助かりました」
「もっとできることはないか」
さやかはし考え、翌の午まで休ませてほしいと頼んだ。匠がすぐに頷いたので、胸の奥にあった慮が緩んだ。全部を断らなくても、自分で必な助けを選べばいいのだとえた。
入まで見送ると、歩の端にまっていたがゆっくりきした。さやかが鞄を引いてを空ける。匠はその持ちにを添えかけて、彼女の顔を見た。
「そんな顔で、丈夫だと言わなくていい」
その声があまりに親しかったので、さやかは返事を忘れた。匠はをろし、線を元へ落とした。
「にも、同じことを言ったんだ」
「……奥様に、ですか」
彼は頷いた。病院の扉がき、たい空気が2のを通り抜けた。さやかは温かかったはずのお茶を持ち直し、今、彼が見ているのは誰なのかを、聞けずにいた。