"26人が去った屋敷――会長の息子は、貧しい家政婦の腕で泣きやんだ" 第3話
泣く理由
最初の3は、うまくいくといかないがあった。同じでも泣き続けることがあり、さやかが抱いても、眠れずにをよじる夜もあった。そのたびに千代と交代し、べたものや起きていたを記録した。
斗の嫌だけで結果を決めず、何が違ったのかを探していくと、さな変化が見えてきた。配膳用の盆に布を敷く。着替えは頬に縫い目が当たらない柔らかなものを選ぶ。交代するが来たら、すぐにれず、しばらく3で同じ絵本を読む。
2週の朝、斗は千代の隣で絵本をいていた。さやかがを洗いにっても、顔をげて確かめるだけで泣かなかった。
「戻ってくるからね」
そう声をかけると、さな指が絵本の犬を叩いた。千代が犬の鳴き声を真似し、斗の元がほころぶ。洗面所へ向かうさやかは、胸の奥が温かくなるのをじた。
そのは匠も付き添って、かかりつけの児科を受診した。診察でこれまでの様子を尋ねられ、彼はさやかの持つノートに目を向けた。
「篠原さんから話してもらっていいですか。々の変化は、彼女が番見ています」
さやかは診察の隅で荷物を持っていようとっていた。匠が子を引いてくれたので、斗を抱いてその席に座り、付箋のついたページをいた。女性の医師は斗を診察し、事や眠について質問したあと、記録をゆっくり読みめた。
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「泣いているだけでなく、そのが分かるのは助かります。音や触れるもの、交代の仕方で様子が変わるんですね」
「私の抱き方がっただけなのかとったんですが、千代さんでも落ち着くようになってきました」
「その変化も切です。体の調がないか引き続き見ながら、して過ごせるやり方を共していきましょう」
匠が子のでを乗りした。
「ずっと母親を求めているからだと、っていました」
「そう考えるお気持ちは分かります。ただ、今、斗くんに何が起きているかを、つずつ見ていきたいですね」
斗は診察を終えると、さやかの膝に戻ろうとした。彼女が抱きげるに、匠が落ちた靴を拾った。履かせようとして留め具を逆に引き、指を止める。
「こちらを先にすんです」
さやかが片方で見せると、匠はもう片方を自分で直した。斗は父親のにを置き、靴が履けるまで待っていた。
敷に戻った頃には昼を回っていた。厨で佐伯美紀がかぼちゃを柔らかく煮ており、蓋をげると甘い湯気が広がった。斗はさやかの隣で子に座り、さなひとをみ込んだ。
もうひとを急がず待つと、自分からスプーンへ顔をづけた。匠は向かいに座ったまま、仕事の話が震えるのを止めた。
「これまで、急ぎすぎていたのかもしれないな」
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誰にともなく言ったあと、彼はさやかを見た。
「最初の、礼も言わずに責めた。すまなかった。息子をよく見てくれて、ありがとう」
器をげに来た由里がを止めた。千代は配膳台にを置いたまま、匠とさやかを交互に見た。さやかは膝ので指をそろえたが、用していた丁寧な返事がすぐにはなかった。
「……私だけではありません。美紀さんがべやすくしてくださって、千代さんが同じやり方を続けてくださったので」
「それをつないだのは君だろう」
匠の声には、採用類を確かめたのたさがなかった。さやかが顔をげると、彼は斗のに落ちたスプーンを拾い、清潔なものに替えていた。
事を終えた斗は子からろしてもらい、さやかの膝へ両をついた。元を拭こうとした彼女を真っすぐ見げ、今までと違う呼び方をした。
「ママ」
匠がにしていた皿を、音をてずにテーブルへ戻した。