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"息子の捜索地図を消す男" 第17話

彼はただ、く、い溜め息をつ吐いただけだった。 まるで、入れを怠った農具が壊れたのを眺めるような、諦の混ざった溜め息だった。

「遥さん」

野寺さんは静かにいた。

「君は、母親としてあの子を守りたいのだろう。それはわかる」

「当たりです!」

「私にも、守らねばならんものがある」

その言葉のあまりのさに、私のの芯が沸騰しそうになった。

「守る……? を撥ねて逃げた孫の、犯罪をですか!? そのために、私の歳の子どもを犠牲にして!?」

「拓は、来には推薦で国学部へむはずだった」

野寺さんの声はく、そして恐ろしいほど確信に満ちていた。

「父親がき、母親も寄り付かんで、この子は度もグレずに机にかじりついて勉してきたんだ。私の誇りだった。この町の誰もが、野寺の孫は派だと褒めてくれた。それが……無免許過失致傷で科がついたらどうなる。退学になり、学も取り消され、を台無しにする。……そんなことは、私が許さん」

「だからって……!」

「殺すつもりなど毛なかった」

野寺さんは鋭く言葉を遮った。

「撥ねられた老の方は、識が戻れば『自分で勝を滑らせて落ちた』とい込むよう、病院の担当医や親族にを回していた。齢で認能も落ちているだ。現には私の軽トラの目撃報もない。

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事故の痕跡は昨夜のですべて流れた。あと数あれば、警察の事故調査も入らず、ただの老の徘徊事故として処理が完するはずだったんだ」

「悠はどうするつもりだったの」

私の唇が震えた。

「あの子はあなたの孫の顔をっている! 事故の瞬をカメラで撮っているのよ! 事故が片付いた、悠をどうするつもりだったの!?」

野寺さんは線をわずかに逸らした。 その瞳の奥に、初めて微かな、だが決して拭えない暗い澱のようなものが揺らめいた。

「……隣町の児童相談所のに、夜ろしてくるつもりだった。カメラのフィルムは抜き取り、記憶が曖昧になるよう言い含めてな。『言うことを聞けばお母さんに会わせてやる』と約束してあった。あの子は賢い子だ。私が危害を加えないと分かれば、暴れたりはしなかった」

「賢い子だから……? そんな嘘に騙されて、たいコンクリートのも閉じ込められていたのよ!」

私の叫び声が、古いの梁を震わせた。

の朝に、何があるかっているんでしょう! 旧堤の放くのよ! 利事務所がを流すために、あの放する! あの没するって、拓くんが言ったわ!」

野寺さんの目が、ぴくりと細くなった。 彼は初めて、うずくまる孫を見ろした。

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その差しには、失望と侮蔑が滲んでいた。

「……話したのか、拓

「おじいちゃん、もうやめよう……!」

くんが顔をげ、涙とに塗れた顔で叫んだ。

「悠くん、してるんだよ! 昨おじいちゃんが置いてきたパンも、ほとんどべてないって言ってたじゃないか! んじゃうよ……このままじゃ、本当にんじゃうよ!」

「黙りなさい!」

野寺さんの号が炸裂した。 その声の凄まじさに、拓くんは息を呑んで縮こまった。

「誰のために私がこんなをかぶっているとっているんだ! おのためだ! 野寺のを、おを守るためだ! ここで怯んでどうする!」

「私の息子の命を、あんたたちのとやらの代わりにしないで!」

私はに踏み込み、野寺さんの正面にった。 差はセンチ以あった。骨張った体躯の老は、威圧そのものだった。 だが、今の私には何の恐怖もなかった。

「鍵をしなさい」

私はを突きした。

「今すぐ、あの観測の鍵を渡しなさい。そして私をそこへ連れてきなさい。……今ここで拒むなら、私はて、喉が裂けるまで叫び続ける。野寺会が孫の轢き逃げを隠すために、私の息子を監禁していると、この集落に聞こえるように叫んでやる!」

野寺さんは無言で私を見ろしていた。 その窩の奥の瞳が、酷な計算を巡らせているのが分かった。

私を力づくでねじ伏せるか。 それとも、別の逃げを模索するか。

では、くで犬が激しく吠えてる声が聞こえた。

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