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"息子の捜索地図を消す男" 第4話

朝の部。 午の部。 午の部。

もの所のたちの名が並んでいる。 跡はまちまちで、震えるような老の字もあれば、殴りきのような若いの字もあった。 それぞれが、自分ので歩いた所を用き残していた。

だが、枚だけ、様相の違う用があった。

バインダーの末尾に挟まれた、「特殊区域・川敷巡回記録」と題された別。 そこには、回分の帯が枠で区切られていた。

、午、午、午、午、午

すべての帯の「担当者」の欄に、同跡で、同じ名かれていた。

野寺修

そして、すべてのの備考欄に、定規で引かれたような真っ直ぐな赤線とともに、こう記されていた。

『旧周辺、ポンプ内部、むら全域。目確認済。痕跡なし』

の端を握る私の指に、爪がい込んだ。

おかしい。

の午といえば、悠が学だ。 まだにすらなっていないだ。 なぜそのに、野寺さんは旧堤を「捜索」しているのか。

いや、違う。 違えだろうか。 それとも、からまとめて類を理したに、違えただけなのか。

だが、めくった次の瞬、私の目は完全に釘付けになった。

バインダーのクリアポケットの隙に、さく折りたたまれた枚のメモ用が挟まっていたのだ。

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自治会の名が入った便箋の切れ端。 そこには、青いボールペンで、きのような文字が並んでいた。

側ルートはち入り禁止。 良のため、次災害の恐れあり。 警察犬・ボランティアはへ誘導すること。 周辺の確認は本職(私)が括してう。 言無用。現揺を防ぐため』

それは、誰かに宛てた指示のようなメモだった。 だが、その跡は紛れもなく、野寺さんのものだった。

「……誘導する?」

声が漏れた。 誰もいないはずの広に、私の掠れた声が吸い込まれていく。

誘導する。 警察犬も、ボランティアも、へ。 が悪いから? 次災害を防ぐため?

それなら、なぜ宮くんが見たという「半」以野寺さんは誰にもその所を探させなかったのか。 なぜ、毎のように「異常なし」とき続け、をあそこへづけないようにしていたのか。

あのメモの「言無用」という文字が、私の目を焼くように痛めつけた。

「遥さん」

で、からりと引き戸がく音がした。

臓ががり、私は弾かれたようにバインダーを閉じた。 が擦れる鋭い音が響く。

暗くなった広の入りに、っていた。 逆で、その輪郭だけが黒く浮きがっている。

野寺さんだった。

彼は片に、濡れた傘を持っていた。

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いつのにか、では細かいり始めていたらしい。 彼の着ている作業着の肩が、粒で濃いに変していた。

「……気もつけずに、どうしたんだい」

野寺さんは、いつもと変わらない穏やかな取りで、板張りの歩ずつ踏みしめてづいてきた。 靴の底についたが、さな黒い染みを作っていく。

そのは、赤黒い、粘質のだった。 ではない。 この町で、あの赤黒いがある所を、私はっていた。

堤の、の周りだ。

野寺、さん……」

声が震えないように、私は必で奥歯を噛みしめた。 抱きかかえたバインダーの角が、私の脇腹に痛いほどい込んでいる。

「商の方はどうだったかね。がかりはあったかい」

野寺さんは私の目のメートルほどの距を止めた。 その顔には、いつもの温で、し疲れたような笑みが浮かんでいる。 だが、その線は私の顔ではなく、私の胸元にあるバインダーへと、静かに、吸い寄せられるように落ちていた。

「……いいえ」

私は言った。 自分の喉からたとはえないほど、たく乾いた声だった。

「誰も、見ていないと……言っていました」

の音が、公民館のトタン根を激しく叩き始めた。 暗い部で、私と野寺さんの線が、初めて音もなく交錯した。

「……誰も、見ていないと……言っていました」

私の声は、音にかき消されそうなほどかすれていた。 だが、野寺さんのには確かに届いたはずだった。

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