"義母が遺した二十年の通帳" 第11話
「なっ……?!」
浩の顎がれそうなくらいにがった。 も真奈も、息を呑んで目を見いている。
『静さんがね、最初の万円を振り込んだそので、私のに来たんだよ。「今から毎、由美さんの座におを送ることにした」ってね。私はずっと見てきたんだよ、姉さんがどんないでそのおを毎面して、の窓に通っていたかをね!』
「そ、そんな……じゃあ、本当にお袋が自分の志で……?」
『当たりだろ! 姉さんがボケるから、いや、姉さんがまだ配の、も体もしっかりしていた頃から始まったことだ!』
芳叔母さんの荒い息遣いが聞こえる。 そして、叔母さんは静かに、だが刃物のように研ぎ澄まされた声で告げた。
『浩。静さんがくなる半、私を病院の病に呼んだんだ。まだ識がはっきりしていた最の午のことだよ』
リビングの空気が、さらに張り詰めた。
『姉さんはね、私にあるものを預けた。「もし私がんで、あの子たちがどうしてもあの通帳を見つけて、由美さんを責めてるようなが来たら……そのは芳、これを持ってあの子たちのに突きつけてやってくれ」ってね』
「預けたって……何を……?」
浩の声が、恐怖で震え始めていた。
『信託の貸庫に預けてある類と、姉さんの直のだよ。公証役で正式に続きを済ませた、法な効力を持つ類だ』
芳叔母さんは、宣告するように言い放った。
広告
『の朝、それを持ってそっちにく。も真奈も、そこにいるんだろう? 全員、逃げずに正座して待っていなさい。姉さんが、おたちという「族」にした最の審判を、そのでしかと聞き届けるんだね』
ツーツーツー……。
方に話が切られた。
スマートフォンの画面が暗転し、リビングには再び、凍りつくような沈黙がりてきた。
浩は脱力したように両腕を垂らし、スマートフォンのでち尽くしていた。 その顔は気に変し、先ほどまでの傲な勢いは見るもなかった。
は線を彷徨わせ、喉を何度もさせている。 真奈はソファーの端に縮こまり、怯えたように自分の腕を抱きしめていた。
「母さん……」
が、掠れた声で私を呼んだ。 だが、その声に私が答えることはなかった。
テーブルの央にある、緑の通帳。 そして、そのに積まれた分の計簿。
では、たいのが、激しく窓ガラスを叩き始めていた。 、このを支えていた最の嘘が、完全に崩れる。 私はただ静かに、え切った緑茶をに含み、訪れるべき朝の気配をじっと待っていた。
翌朝の佐藤は、墓のようにえ切っていた。
昨夜、浩が慌てて所のコンビニに駆け込み、滞納していたガス料を支払ったため、湯器の警告ランプはようやく消えていた。
広告
だが、度芯までえ切った築の軒は、をつけた程度では温まらない。 からいがってくる底えが、首を締め付けるように痛かった。
ダイニングテーブルのには、昨夜私が突きつけた分の計簿のファイルが、黒々としたのように積まれている。 その横には、あの緑の通帳。 残『百万円』の数字が、暗いリビングの空気のに毒のように漂っていた。
午。 普段なら休の朝寝坊を決め込んでいるはずの浩が、すでにスーツ用のスラックスを穿き、い表でテーブルの端に座っていた。 目のには真っ黒な隈ができ、無精髭の伸びた顎を落ち着かなさそうに撫で回している。
階からは、と真奈が申し訳程度に着替えてりてきた。 とも、昨夜の勢いはどこへやら、をこうともしない。 昨晩、ネットで『遺産分割 贈与 隠蔽』『親族 横領 効』といった言葉を夜通し検索していたのだろう。 の充血した目が、スマホの画面とテーブルの通帳のをせわしなく往復していた。
「……おい」
浩が、掠れた声でをいた。 私を見るのではなく、ただ空に向かって吐きすような声だった。
「芳叔母さんが来たら、おは余計なを利くなよ。いいな」
私は台所で、自分のために淹れた杯のほうじ茶を湯呑みに注ぎながら、夫の言葉を背で聞いていた。