"義母が遺した二十年の通帳" 第10話
プライドをズタズタに引き裂かれ、自分が問「甲斐性のない寄虫」だったという事実を突きつけられた男の、最も醜悪な防本能だった。
「いいだろう、そこまで言うなら、内に判断してもらおうじゃないか!」
浩はポケットから乱暴にスマートフォンを取りした。
「お袋の妹の、芳叔母さんだ! 叔母さんなら、お袋の遺産のことも、当ののことも全部ってるはずだ! お袋の内に全部ぶちまけて、おがやってきた悪事をのに晒してやる! 親族会議だ! 叔母さんにここに来てもらって、おからその通帳を没収してもらうからな!」
「お父さん、やめなよ……」と真奈が青ざめた顔で止めたが、浩は止まらなかった。
「黙ってろ! こいつのい通りにされてたまるか! 俺はこのの主だぞ!」
浩は震える指で画面をタップし、スピーカー通話のボタンを押した。
プルルル……プルルル……。
え切ったリビングに、械な呼びし音が無質に鳴り響く。 浩は勝ち誇ったような、だが怯えを隠しきれない目で私を睨みつけていた。 私を親族の権威で屈させ、罪として仕てげようとしているのだ。
回、回。 呼びし音が続く。
やがて、カチャリと受話器ががる音がした。
『……はい、佐藤ですけど』
く、落ち着いた、だがどこか凛とした初老の女性の声がスピーカーから流れてきた。
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義母・静の実の妹であり、親族ので最も発言力を持つ、歳になる芳叔母さんだった。
「あ、叔母さん! 浩です! 夜分遅くにすいません!」
浩は急に声をずらせ、泣きつくような調になった。
『浩? こんなに、体何事だい。はいんだよ』
「緊急事態なんです! お袋のことで……いや、由美のことです! 今すぐ叔母さんに聞いてほしいことがあって話しました!」
『由美さんのこと……?』
芳叔母さんの声のトーンが、僅かに変わった。
「そうなんです! とんでもないことが分かったんですよ! さっき、由美の部から隠し通帳が見つかったんです! なんと、お袋がぬ直までの、毎万円ずつ、由美の個座にを振り込み続けてたんですよ! 残が百万以もあるんです!」
浩は気にまくしてた。 自分の正当性を信じて疑わない、醜い被害者識に満ちた声だった。
「由美のやつ、それをも族に隠してネコババしてたんですよ! 俺たちがどれだけ活に苦労してきたかってるくせに! これは横領です! お袋のを騙し取ってたに決まってます! 叔母さん、にでもうちに来て、親族の代表としてこの女から通帳を取りげてください! このままじゃ佐藤の財産が奪われてしまいます!」
浩は息を切らし、得げに私を見せつけた。
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どうだ、これでおは終わりだ――そう言いたげな顔だった。
だが。
スマートフォンの向こうからは、何の返答もなかった。
「……もしもし? 叔母さん? 聞こえてますか?」
浩が審そうに画面を覗き込む。 リビングを支配したのは、苦しく、底えのするような沈黙だった。
秒、秒。 い沈黙のあと、スピーカーからい、の底から漏れるような溜息が聞こえた。
『……はぁぁぁ……』
「叔母さん……?」
『浩』
芳叔母さんの声は、っているのではなかった。 それは、救いようのない愚か者を見つめるような、底なしのたさとれみに満ちていた。
『おは本当に……どこまで救いようのない、愚かな男なんだい』
「え……?」
浩の表が凍りついた。
「な、何を言ってるんですか、叔母さん。騙されてたのは俺の方で……」
『黙ってお聞き、浩!』
ピシャリと、平打ちをらわせるような鋭いがスピーカーからんだ。 浩がビクッと肩をねがらせる。
『お、今なんて言った? 「お袋のを騙し取ってた」? 「佐藤の財産が奪われる」? よくもまあ、そんな浅ましい言葉がそのからてきたもんだね。恥をりなさい、恥を!』
「だ、だって、百万ですよ?! お袋が俺たちに内緒で……」
『内緒にするに決まってるだろうが!!』
芳叔母さんの声が、静まり返った部を震わせた。
『おたちにられたら、で毟り取られて消えてしまうようなおを、誰が好き好んで教えるもんかい! その通帳のことはね、私はから全部ってるよ!』