"義母が遺した二十年の通帳" 第8話
真奈は涙を浮かべながら、私を指差した。
「私、諦めて元の私にったんだよ?! 友達みんな留学ったり暮らししたりしてるのに、私だけさせられて! 百万も隠し持ってたくせに、自分の娘のを潰したの?! 最! 毒親じゃない!」
続いて、が嘲笑混じりのたい声を被せてきた。
「真奈の言う通りだよ。ていうかさ、それ以の問題だろ。この、元はおばあちゃんのだろ? 佐藤のじゃん。母さんはから嫁いできただけのだろ。なんで佐藤の遺産を、母さんがでネコババしてんだよ」
は歳になり、気なを利くようになったが、その考の根底にあるのは父親譲りの勝さだった。
「法に言えばさ、それって特別受益か、最悪のは贈与の隠蔽だろ。俺と真奈にも相続する権利があるはずだよ。ばあちゃんがんだ今、その百万は俺たち族全員で分けるのが筋だ。それを独り占めして、今までシラを切ってたなんて……正直、軽蔑するわ」
父親、女、男。 方向から浴びせられる罵倒と糾弾。
彼らの言葉を聞きながら、私は胸ので、奇妙なほど徹に状況を観察していた。 このたちにとって、私がかけて流した汗も、眠を削って擦り減らした体も、何のも持たなかったのだ。
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見えているのは『百万円』という数字だけ。 そして、それをどうやって自分たちの懐に引きずり込むかという算段だけ。
浩が満そうに頷き、を乗りしてきた。
「聞いたか、由美。子供たちもこう言ってる。おのやってることは、族に対するらかな背信為だ。いいか、話をつけてやる。その百万、今すぐ解約して全額引きせ」
浩は指を本てた。
「俺が百万。と真奈に百万ずつだ。おはこれまで散々俺の稼ぎで飯をってきたんだから、取り分がなくても文句は言えないはずだ。その代わり、この件は警察にも親戚にも言わずに問にしてやる。どうだ、ありがたいだろ?」
「ありがたい?」
私はわず、く乾いた笑いを漏らした。
「なにがおかしい!」
「おかしくてたまらないんです」
私は子からちがった。 リビングの隅にある、な製のサイドボードへ向かう。 の線が私のきを追う。
私はサイドボードの最段の扉をけ、奥から分いプラスチックのケースを引きした。 ドサリ、とい音をててそれをテーブルのに置く。
には、季の入った分いA4のファイルが、冊ぎっしりと詰まっていた。
「……なんだよ、それ」
浩が怪訝そうに眉を寄せる。
「分の、計簿です」
私が最初の冊を引っ張りし、浩のに叩きつけるように置いた。
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表には、几帳面な私のきで『平成度・佐藤計簿』と記されている。
「浩さん。あなたが『俺の稼ぎで飯をわせてやった』とおっしゃるなら、現実を見ていただきましょう」
私はファイルを乱暴にいた。 そこには、のレシート、公共料の領収証、の引き落とし細が、円の狂いもなく貼り付けられ、収支がびっしりとき込まれていた。
「あなたが毎、活費として私に渡していた額はいくらでしたか? 覚えていらっしゃいますか?」
「……そ、それは……万とか、そのくらいだろ」
「いいえ。最初は万円です。そこからあなたが昇しても、渡される額は万千円から度もがりませんでした。問、ずっとです」
私はページをめくり、赤いボールペンで引かれた数字を指差した。
「このの宅ローン、々いくらでしたか? 万千円です。費と代で平均万円。固定資産税の積で万千円。残りの万数千円で、、子供の費と用品が賄えるといますか?」
浩の目が泳ぎ始めた。
「そ、それは……ボーナスからしてただろ!」
「ボーナス? あなたがボーナスからに入れたのは、と真奈の学資保険の払い分だけです。残りはすべて、あなたのゴルフ代、み代、そしてに度買い替える輪やクラブの費用に消えていました。
ここにすべて記録してあります。あなたのサイン入りの領収証も添えて」