みかん小説
本棚

"母が残した最後の住所" 第10話

いた。

沼田がげた。

「坊っちゃま、お待ちしておりました」

えば。

俺が受け継ぎたいのは。

敷ではなかった。

株でもなかった。

あの

「ここへ入っていい」

わせてくれた所そのものだった。

就任の

俺は社員を倉庫へ集めた。

210

井さんはすでに厨を引退していたが、わざわざ来てくれた。さんも堀内さんもいた。代の友望も数から設備担当として働いていた。

俺は原稿を持たずに話した。

「私は14歳で母をくしました。当、頼れる親戚はいないとっていました。実際、度訪ねたでは、“うちへ来られても困る”と言われました」

倉庫が静かになった。

「その、母の遺品から所だけがかれたメモがてきました。そこへくと、この会社の族がいました。私にとって朝倉醸造は、所を失ったが最にたどり着いた所です」

ろでが腕を組んでいた。

学2

施設育ちのあいつは俺へ言った。

くとこないなら、うち来ればいいよ》

あの言葉も。

忘れていない。

「だからつだけ約束します。この会社は、困っているを簡単に切り捨てません。社員でも、取引先でも、その族でもです。ただし、何でも無料で助けるというではありません。緒にどうすればち直れるか考える会社にしたい」

広告

が起きた。

列に。

子の祖父がいた。

だけで。

ゆっくり拍をしていた。

就任から

20ぶりに伯母から話が来た。

テレビの域ニュースで俺を見たらしい。

君、きくなったわね。派になって」

昔と同じ声だった。

やがて話は、娘の夫の会社が経営難で困っているという内容になった。

「親戚なんだから、こういうは助けわないとね」

俺は最まで聞いた。

「伯母さん。母がくなった、俺は14歳でした。あの、引き取ってくれなかったことを責めるつもりはありません。本当に余裕がなかったのかもしれない」

「そうなのよ。分かってくれる?」

「はい。ただ、あの俺はりました。俺たちは、そういう関係なんだって」

伯母が黙った。

「会社として相談は受けます。条件がえば取引も支援もします。でも親戚だから特別に、というお願いは受けません」

たい子ね」

「そうかもしれません」

話を切っても。

ではなかった。

復讐した気持ちもない。

ただつ。

14歳の自分へ。

これでいい。

と言えた気がした。

祖父が再び入院したのは、そのだった。85歳になり、今度は医師からくないかもしれないと告げられた。俺は仕事を終えると毎のように病院へ寄り、眠っているだけのもベッドの横へ座った。

ある夕方。

祖父は珍しく目をけていた。

広告

「はい」

つ、謝らんといかん」

「またですか」

俺が笑うと、祖父もしだけ元を緩めた。

「千鶴を守れんかった。おにもいこと苦労をさせた」

「もう聞きましたよ」

「まだある」

祖父は息をえた。

「おが最初に敷へ来た、わしは千鶴の代わりが帰ってきたとった。それは本当だ」

俺は黙って聞いた。

「だが、その見てきたのは千鶴ではない。だ。おはおだった」

祖父は目を閉じた。

俺は内ポケットから、何も持ち歩いている枚のを取りした。

母が残したメモだった。

折り目はくなり、端も擦れている。

《本当にになっただけ、この所へきなさい。》

「母さんは、最まで自分のためにはここを使いませんでした」

祖父が目をけた。

「でも俺が本当にになったには、ここへけって残してくれた。だから全部が無駄だったとはってません」

祖父の目から涙がこぼれた。

俺は、その細くなったを握った。

しばらく迷ったあと。

初めて真正面から呼んだ。

「おじいちゃん」

祖父の指が、く握り返した。

「ああ」

それが祖父の最の言葉になった。

その夜。

眠るようにくなった。

葬儀には社員や取引先、域のわせて400が来た。さんは棺のげ、井さんは声をげて泣いた。89歳になっていた沼田は最まで子へ座らず、「旦様をお見送りする最のお務めです」

と背筋を伸ばしていた。

葬儀の翌

俺は沼田の部った。

「息子さんの所、今も分かりますよね」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: