"奪われた十八年の通帳" 第18話
「曜の総会、第部の監査報告の枠を、登紀子さんのために空けろ。……剛造さんの娘が、分の落としをつけにくんだ。港運の総力を挙げて、ろ盾になれ」
「承しました」
沢田弁護士は微かに角をげ、帳にペンをらせた。
「登紀子さん。曜の午分、本社ビルの正面玄関でお待ちしております。あなたの入館証と、法なすべての差し押さえ通を用しておきます」
「ありがとうございます」
私はくをげ、応接をにした。
突堤にると、正午を過ぎたの太陽が、鈍のをく照らしていた。 は相変わらずたかったが、私の肺を満たす空気は、朝よりもずっとく、澄み渡っていた。
曜の午。 そして、曜。
私はいつも通りのに起き、いつも通りに台所にった。 静子のオムツを替え、い根の噌汁をませ、汚れたシーツを洗濯に放り込んだ。
静子は、私が黙々として働く姿を見て、、嫌よく嘲笑を浴びせ続けた。
「おい、登紀子! 敏之から連絡があったよ! 千葉の偉い役員さんたちに、ゴルフですごく気に入られたんだってさ! 来からは本社栄転だよ! あんたみたいな臭い女、いよいよお払い箱だねえ!」
「……そうですか。良かったですね」
「ふん、悔しそうな顔しちゃって! 敏之が帰ってきたら、あんたに切れを叩きつけてやるって言ってたよ! せいぜい今のうちに、自分のボロでもまとめておくんだね!」
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私は何も言わず、雑巾でを磨き続けた。 彼女の言葉のすべてが、ただのれな聴のように通り過ぎていく。
夜、静子が寝静まった、私は事務所の古いパソコンの履歴から見つけした、玲奈の公SNSのアカウントをいた。
そこには、数に投稿されたばかりの写真が、鮮やかな彩で並んでいた。
『好きな彼と、伊豆の隠れ旅館なう♡ お部の呂からが見えて最すぎる……! 客係のに「お似いのご夫婦ですね」って言われちゃった(笑)』
写真には、湯煙の向こうに広がる相模湾と、檜の呂桶。 次の写真には、伊勢老と鮑の刺の舟盛り。 そして、枚目の写真。
旅館の浴の袖から伸びた、の腕がなりっていた。 男の腕には、あの万円の限定モデルの計。 そして、その薬指には、に輝く真しいペアリング。
『彼は仕事も超できるし、私のこと番に考えてくれる♡ もうすぐ厄介な古株ババアとも縁が切れるし、 駅のタワマンでの活が待ちきれない! 今まで苦労した分、ぜーんぶ彼に甘えちゃお♡』
画面をスクロールする私の指先は、微も震えていなかった。
客呂。 伊勢老の舟盛り。 ペアの指輪。
すべて、私が、夜の荷捌きで爪を割り、腰を痛め、氷にを浸して稼いだだ。 そして、玲奈の弟を崖から突き落としてせしめた、血の保険だ。
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「……分に、わいなさい」
私は青くるスマートフォンの画面を伏せ、たい暗のに呟いた。 それが、あなたたちのでわう、最の贅沢なのだから。
そして、曜。 午半。
ガタガタとトタン壁を震わせながら、クラウンが戻ってきた。 玄関のドアが乱暴にく。
「おい、帰ったぞ」
靴を脱ぎ散らかし、居に入ってきた敏之の顔は、温泉帰りの照りと、酒の匂いで赤く緩んでいた。 青いゴルフジャケットからは、隠しようもない硫黄の臭気と、玲奈のあのバニラのが、烈にち込めている。
「敏之! お帰り、疲れたろ!」
奥のから、静子が子を軋ませててきた。
「ああ、母さん。成功だよ。役員連も俺のプランに賛成でな。曜の発表会が終われば、本社の子は確実だ」
敏之は得満面に笑い、こたつの座にどっかりと座った。 そして、台所にっていた私を、顎でしゃくった。
「おい、登紀子。ちょっとそこへ座れ」
その声には、すべてをに入れたとい込んでいる男の、傲で底の浅い優越が満ち溢れていた。
私はエプロンをし、敏之の対面に静かに正座した。 静子もまた、期待に満ちたの悪い笑みを浮かべて、敏之の横に子を寄せる。
敏之はボストンバッグのジッパーをけ、から枚のと、茶い封筒を取りした。