"奪われた十八年の通帳" 第11話
自分がで「親孝な息子」面をするために、、私にすべての排泄物の始末を押し付けてきた実の母親すらも、奥の無認施設に姥捨てのように放り捨てる算段をつけていた。
すべては、女としい活を始めるため。 すべては、駅のぎれいなマンションで「成功者」として暮らすため。
そして、ファイルの最層から、枚の折り畳まれたが現れた。
い黄緑の用。 部に印刷された文字が、私の界を酷に射抜いた。
『婚届』
用の夫の欄には、敏之の几帳面な跡で、本籍から、私の名まで、寸分の狂いもなく記入されていた。 空なのは、私の署名と捺印の欄だけ。
そして、側の『証』の欄。
所:横浜区…… 氏名:玲奈 :平成……
堂々とした跡でかれた女の名の横に、朱肉の鮮やかな赤が、まるで嘲笑うかのようにくっきりと押されていた。
が、並んでペンをらせる姿が脳裏に浮かんだ。 ホテルのベッドのか、あるいは敏之の奢りで入った洒落たイタリアンのテーブルか。
「くあの煤けたババアにサインさせなよ」 「ああ、もうすぐだ。の売却が決まったら、気に叩きしてやるよ」
そんな品な会話が、にとるように聞こえてくるようだった。
証欄に、倫相の名をく。 それが、どれほど私というを侮辱し、踏みにじる為であるか。
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彼らはそれを理解したで、あえてやっているのだ。 自分たちが絶対な勝者であり、私が抵抗すらできない無力な畜であると、骨の髄までらしめるために。
「……ふふ」
に、喉の奥からさな笑いが漏れた。 自分でも驚くほど、たく、乾いた笑いだった。
しみは、完全にんだ。 胸の奥で燻っていた最の片のすら、この緑の切れを見た瞬に、跡形もなく消えった。
私は作業着の胸ポケットから、私用のスマートフォンを取りした。 画面が割れ、セロハンテープで補した古い端末。
カシャ。 カシャ。 カシャ。
静まり返った部に、械なシャッター音が響く。 残万円の通帳。 産の査定。 奥の施設のパンフレットと、ピンクの付箋。 そして、玲奈が証として署名した緑の婚届。
ピントがぶれないよう、枚枚、角度を変えて慎に撮していく。 全てのデータをクラウドの全なストレージに転送し、送信完の文字を確認した。
類を元通りの順番にね、引きしに戻そうとした、そのだった。
キャビネットの底板の隙。 錆びた鉄板の奥くに、黒いさな方形の物体が押し込まれているのが見えた。
指を突っ込み、引きずりす。 それは、数に敏之が使っていた、古いドコモのガラケーだった。 すでに解約されているはずの端末。
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だが、充コードがキャビネットの背面の穴から引き込まれ、コンセントに差し込まれたままになっていた。
源ボタンを押しする。 液晶画面がパッと青く点灯し、待ち受け画面が表示された。 パスコードはかかっていなかった。
受信トレイをく。 最のメールは、昨夜の午分。 差は『玲奈』。
『今週末の伊豆、付き客予約できたよ! 超楽しみ♡ あの軽油臭いババアにさっさと判捺させて追いしてね。 あたし、く敏之さんの本当の奥さんになりたいな♡』
画面を見つめる私の瞳に、何のも浮かばなかった。 ただ、その文字の並びを、網膜の裏側に酷に刻み込んだ。
「……今週末の、伊豆」
敏之は今朝、「今週末は親会社の荷き確認で、千葉の営業所に泊まり込みだ」と嘘をついていた。 すべてが、綺麗に繋がっていく。
私はガラケーの画面を撮し、元の位置、ミリ単位の狂いもなく正確に押し戻した。 引きしを閉め、京錠をかけ、真鍮の鍵を備領の背表の裏に戻す。
部をて、トタンの引き戸を閉めた、私のは凍てつくののように澄み渡っていた。
午半。 予告通り、デイサービスのが静子を連れて戻ってきた。
「ただいまー! ああ、疲れたよ!」
玄関に迎えにると、静子は嫌で子を揺らしていた。 そのには、デイサービスの連絡帳が握られている。
「おい、登紀子! 敏之から連絡はあったかい?」